「戦勝」を対米・台湾に利用=9月の抗日記念日へ布石―中国 2025年05月10日 05時21分

【北京時事】中国の習近平国家主席は10日、ロシア訪問の4日間の日程を終え、帰国する。プーチン大統領と会談し、対ドイツ戦勝80年記念の軍事パレードを観覧。中ロの結束を再確認するとともに、第2次大戦での「勝利」を、習政権が目指す「台湾統一」の正当性の宣伝や対米批判に利用した。
「中ロは80年前に多大な犠牲を払い、世界平和と人類の進歩に歴史的な貢献をした」。習氏は8日の会談でプーチン氏にこう語り、両国が現在まで続く戦後の国際秩序の礎を築いたと主張。国連安全保障理事会の常任理事国として「特別な責任」を負うとも強調した。
会談後に発表した共同声明では、軍事協力の拡大をうたったほか、「関税の乱用など経済・貿易秩序を破壊する行為」に反対すると明記。高関税政策や国際機関からの離脱を進めるトランプ政権を「秩序を乱す勢力」と位置付け、糾弾した形だ。
習氏はまた、現地メディアへの寄稿文で「台湾は80年前に日本から解放された。台湾が中国の元に戻ることは、戦後の国際秩序の重要な構成要素だ」と指摘。「(台湾)統一へ向かう歴史の流れは止められない」とつづった。
習政権は今回、軍事パレードなど関連行事に中国軍から100人以上の儀仗(ぎじょう)隊を派遣。習氏自身も、ウクライナによるドローン攻撃のリスクがある中でモスクワ入りし、ロシア重視の姿勢を示した。
トランプ政権下で対米共闘の重要性が高まっていることに加え、習氏の念頭には、9月に控える抗日戦勝記念式典があるとみられる。中国が輪番議長国を務める上海協力機構(SCO)首脳会議を同時期に開催するもようで、プーチン氏をはじめとする多数の首脳を招待する。米国の国際的信用が急落する中、習政権の影響力を内外に誇示したい考えだ。