異次元緩和「想定ほど効果なし」=非デフレ化には貢献―日銀が政策検証結果 2024年12月19日 21時35分
日銀は19日、1990年代後半から25年間にわたる金融緩和政策の効果と副作用をまとめた検証結果「多角的レビュー」を公表した。黒田東彦前総裁の下で2013年4月に導入した量的・質的金融緩和(異次元緩和)について「わが国経済がデフレではない状態となることに貢献した」と評価したが、「当初想定したほどの効果は発揮しなかった」として、2%物価目標達成には力不足だったと結論付けた。
全体としては「経済にプラスの影響をもたらした」と総括したが、国債市場の機能低下や金融機関の収益圧迫などの副作用も認定した。植田和男総裁は19日の記者会見で「期待物価上昇率に与える効果は思っていたほど確実ではない」と説明。「副作用もいろいろあり、まだ全部は出切っていないかもしれない」とも述べ、今後の景気悪化局面では慎重に政策手段を判断する考えを示した。
検証結果は、異次元緩和を含む「非伝統的な政策手段」の効果について、「短期金利の操作による伝統的な政策手段に比べ不確実だ」と分析。今後、採用を検討する際は「副作用を抑制しながら制度を設計していく必要がある」と指摘した。
政策運営への教訓としては「景気悪化時に実質金利を引き下げることができるよう、小幅のプラスの物価上昇率を安定して実現していくことが重要だ」との見解を示し、利上げを進めて不況時に利下げできる余地を確保しておく必要性に触れた。
過去25年の政策検証は、23年4月に就任した植田総裁が打ち出し、外部の専門家を交えて1年半かけて議論してきた。植田日銀は今年3月、異次元緩和の一環として16年に導入したマイナス金利政策などを撤廃。短期金利を操作する「普通の金融政策」(植田氏)に回帰している。
異次元緩和の効果については、平均で実質GDP(国内総生産)を1.3~1.8%程度、消費者物価(生鮮食品とエネルギー除く)の前年比を0.5~0.7%程度、それぞれ押し上げたと試算した。
副作用では、国債増発や財政規律の緩みを招いたとの批判もあるが、「財政資金の調達支援が目的の『財政ファイナンス』ではないと明確に示していくことが極めて重要だ」と記すにとどめた。