「責任政党」の看板重視=消費減税見送り、与党になお火種―経済対策 2025年05月09日 20時02分

政府・自民党が消費税減税を見送る調整に入ったのは、夏の参院選を見据えて「責任政党」の看板を守るためだ。増え続ける社会保障費の財源を確保しなければならない現実を踏まえれば、大衆迎合と批判されかねない政策と一線を画す方が得策と判断した。ただ、自民の参院議員や公明党には減税になお期待が強く、火種を残す。
「減税が選挙のプラスになるのか。むしろ『そんな政党に政権を任せられない』と言われる」。政権幹部は9日、こう強調した。
石破茂首相は3月末、消費税減税について「一概に否定するつもりは全くない」と発言。直後に修正したが、財政規律を重視し、財務省も頼りにする森山裕幹事長は一貫して慎重だった。両氏は今月8日夜に会談。森山氏は高校無償化やガソリン税暫定税率廃止、電気・ガス代補助を既に決めたことを踏まえ、悩む首相を押し切ったとみられる。
だが、自民内では改選を迎える参院議員らが危機感を募らせる。武見敬三参院議員会長は4月、党所属参院議員の8割が消費税減税を求めているとの聴取結果を森山氏に報告。今月8日には青山繁晴参院議員ら有志が約70人の署名を添えて森山氏に要請した。
公明は参院選公約第1弾に「家計を応援する」と明記。斉藤鉄夫代表は9日の記者会見で、経済対策について「骨格は減税だ」と述べた。幹部は「世論に訴えられるのは消費税しかない」と断言。個人的見解として食料品の税率を8%から5%に引き下げる案を口にした。
森山氏は自民議員を対象に来週にも消費税に関する「勉強会」を開き、社会保障財源としての重要性に理解を求める考え。とはいえ、消費税減税に代わる「目玉政策」について、自民関係者は「妙案はない」と漏らす。
一方、野党は減税一色だ。立憲民主党と日本維新の会はそれぞれ1~2年の「食料品0%」を主張。国民民主党と共産党は一律5%への引き下げを掲げる。
盛り上がる減税論議と対照的に、財源に関する議論は深まっていない。立民は税負担軽減に関する作業チームを8日に発足させており、制度設計などについて月内に見解をまとめる方針。ただ、財源を巡っては「きちんとしたものを出せるかどうか」(中堅)と不安視する声が広がる。