対日経済協力を重視=「穏健」石破氏と関係構築急ぐ―韓国大統領 2025年08月23日 19時04分

韓国の李在明大統領は23日、同盟国の米国より先に日本を訪問し、対日関係を重視する姿勢を鮮明にした。米中対立の激化に加え、トランプ米政権による高関税政策で自由貿易体制がきしむ中、日本との経済協力は不可欠との認識が背景にある。
「通商・安全保障問題を巡って国際秩序が揺れ動いており、価値観などが似て立場の近い韓国と日本がこれまで以上に協力を強化すべきだ」。李氏は23日、石破茂首相との会談でこう強調した。李氏の来日は就任からわずか80日。参院選での与党敗北で日本の政局が不安定化する中、「歴史問題に前向き」(高官)で穏健な対韓姿勢とみられている石破氏が在任している間に、日韓の協力基調を固めたい意向ものぞく。
李氏は野党代表時代、尹錫悦前政権の対日政策を「屈辱外交」と厳しく批判したが、大統領就任後は実益を重視する「実用外交」に転換した。ただ、依然「反日イメージ」が残り、韓国高官は「訪日を通じ、偏見が払拭されることを期待している」と明かす。
韓国大統領が日本と米国を続けて訪問するのは異例で、別の高官は「韓日関係と韓米日連携を重視する姿勢を自然に示すことができる」と説明する。中国を強くけん制するトランプ政権へのメッセージでもある。
李氏が日韓の経済協力を訴える背景には韓国の景気悪化がある。米国の関税政策も重なり、韓国政府は22日、今年の国内総生産(GDP)成長率予測を0.9%に下方修正。李氏が最優先課題と掲げる景気回復に失敗すれば支持率にも影響しかねない。
韓国は輸出がGDPの約4割を占める。国交正常化当初は日本から支援を受ける立場だった韓国だが、現在では1人当たりGDPが日本を上回る。恒常的に対日貿易赤字を抱えてきたが、今の韓国には、日本は輸出・投資の余地が大きい魅力ある市場と映る。特に半導体などでの連携強化を目指しており、韓国与党では包括的および先進的な環太平洋連携協定(CPTPP)への加入や日韓自由貿易協定(FTA)の締結への期待も浮上する。
ただ、支持基盤の革新勢力には歴史問題を重視する人が少なくなく、李氏の姿勢に戸惑いや不満もある。CPTPP加入などに対して農業団体などの反発が必至だ。今後も協力の基調を維持するには、具体的な成果を示し、国内を説得できるかが問われそうだ。
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