欧州委のSMS非開示は無効=コロナワクチン契約巡るやりとり―EU裁判所 2025年05月15日 05時50分

【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)の一般裁判所は14日、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)記者が行った新型コロナワクチンに関する文書開示請求について、請求を却下した欧州委員会の決定を無効とする判決を言い渡した。ワクチンの契約を巡る携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)を使ったやりとりが対象で、今後のEUの情報公開の在り方に影響を与える可能性がある。
問題となったのは、フォンデアライエン欧州委員長と米製薬大手ファイザーのブーラ最高経営責任者(CEO)が2021年1月~22年5月に交わしたメッセージ。EUが21年にファイザーと締結した最大18億回分のワクチン購入契約が以前よりも高額だったため、NYT側は価格が不当につり上げられた疑いがあるとみて、委員長の携帯電話に残るメッセージの開示を求めた。
これに対し欧州委は22年11月、「該当する文書は保有していない」として請求を却下。NYT側が23年1月に提訴したが、欧州委は、SMSは一時的な通信手段であり、保存や開示の対象となるような重要情報を含まないと主張してきた。
しかし一般裁は、市民の公的情報へのアクセス権を保障する情報公開法の趣旨に照らし、「原則としてEU機関のすべての文書は一般に公開されるべきだ」と指摘。NYT側が提出した一連の証拠により、文書の存在や保有を否定する欧州委の主張は合理性を欠くと認定した。