〔国際女性デー50年〕男女格差解消に「134年」=日本は政治・経済で遅れ―WEF専門家 2025年03月08日 14時20分

世界経済フォーラム(WEF)専門家のシルヤ・バラー氏(同フォーラム提供)
世界経済フォーラム(WEF)専門家のシルヤ・バラー氏(同フォーラム提供)

 【ロンドン時事】スイスのシンクタンク、世界経済フォーラム(WEF)が発表する年次の「ジェンダーギャップ指数」は、男女平等度を示す指標として国際的に広く認知されている。8日の国際女性デーに合わせ、WEFで「多様性、公平性、包括性(DEI)」部門の責任者を務めるシルヤ・バラー氏に話を聞いた。
 ―ジェンダーギャップ指数を発表する意義は。
 国ごとの男女格差の状況を可視化し、継続的に測定・比較することで、政策決定や企業戦略の指針となり得る。最新の2024年の報告書によると、現在のペースでは世界全体で完全な男女平等の達成には134年かかると試算されている。健康や教育の分野では格差が縮小しつつある一方、政治や経済の分野では依然として大きな隔たりが残っている。
 ―日本は低い順位が続いている。
 24年の日本の順位は146カ国中118位で、過去最低だった前年の125位からは上昇した。しかし、政治や経済分野における女性の活躍には大きな課題がある。特に政治分野では平等度が12%にとどまり、世界平均の22%を大きく下回っている。直近の選挙では女性議員の割合が増加したものの、閣僚に占める女性比率は減少しており、進展が一様ではない。こうした動向は、6月に公表予定の25年の報告書に反映されるだろう。
 ―日本が優先的に取り組むべき課題は。
 企業レベルでは、採用・昇進・給与の決定プロセスを公平にすることが重要だ。特に女性の管理職登用の遅れや賃金格差が依然として目立つ。労働市場の変化に対応し、成長が見込まれる分野で女性の参画を促すことも不可欠だ。例えば、理工系分野では女性の進出が少なく、上級職への昇進率が低いという問題が顕著に見られる。
 政府レベルでは、女性の政治参加の促進に加え、介護・福祉産業への公的投資が求められる。高齢化が進む中、同産業への投資は経済成長を後押しするだけでなく、女性の労働市場参入を促す効果も期待できる。
 ―世界的な右派・極右勢力の台頭は逆風か。
 一部の国でDEIを支援するプログラムに対する公的資金が削減されているのは大きな問題だ。短期的には男女格差解消の進展が鈍る恐れがある。しかし、多様性のある組織や経済は、変化の激しい時代において持続可能性が高いことがデータからも明らかになっている。男女平等を政策や企業戦略の中核に取り入れ、その拡大がもたらす利益を実現しなければならない。

 

 ◇シルヤ・バラー氏略歴
 シルヤ・バラー氏 英ケンブリッジ大で経済学士号、英オックスフォード大で経済学の修士号および博士号を取得。世界経済フォーラム(WEF)の「新経済・社会センター」において「多様性、公平性、包括性(DEI)」部門の責任者を務める。デジタル化や競争力、国際貿易などの分野に精通し、国際機関や民間企業、研究機関で20年の職務経験を持つ。 

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