献血で新生児240万人救う=特殊抗体持つ男性死去―豪 2025年03月08日 06時00分

【シドニー時事】生涯に1173回の献血を行い、「黄金の腕」を持つと称されたオーストラリア人男性、ジェームズ・ハリソンさんが2月に死去した。88歳だった。豪赤十字社が発表した。特殊な抗体を持ち、その血液を原料にした薬剤で累計240万人の新生児の命が救われた。
ハリソンさんは14歳の時、輸血を伴う肺の手術を受けた。恩返しとして18歳から献血を始めたところ、希少成分の「抗D抗体」を持つことが判明。妊娠・出産に際して母子の赤血球が不適合を起こす疾患を治療する血液製剤に、ハリソンさんの血液が生かされた。多い時には2週間に1度のペースで、81歳まで献血を続けた。
豪赤十字社は「彼は見知らぬ赤ちゃんを助けるため、腕を差し出し続けた。救命への貢献に感謝する」とたたえた。娘のトレーシー・メローシップさんもこの血液製剤の投与を受けたといい、「父は人道主義者で、多くの命を救ったことを誇りに思っていた」と振り返った。