ウクライナ支援、増強急ぐ=「あらゆる手尽くす」―欧州各国 2025年03月07日 15時48分

【ブリュッセル時事】ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、欧州各国が支援増強を急いでいる。軍事面でウクライナの最大のよりどころだった米国が支援停止に踏み切ったことで、危機感が一気に高まった。欧州連合(EU)の取り組みと連動し国別で動きが加速している。
2月下旬に総選挙が行われたドイツでは、連立協議中の左右2陣営が4日、国債発行額に制限を課している財政規律の緩和などで歩み寄りが実現したと発表した。これにより、ウクライナへの武器供与を拡充できる算段だ。
両陣営は新政権の樹立を待たず、来週にも関連法案を議会に提出する。次期首相の座が確実視されるメルツ・キリスト教民主同盟(CDU)党首は「国防のためあらゆる手を尽くす」と訴えた。
アイルランド政府は4日、海外派兵の前提条件としてきた国連安全保障理事会の決議を不要にする改正法案を閣議決定した。ウクライナでの停戦後に検討されている平和維持活動に参加するために、現状では安保理常任理事国のロシアに許可を求めなければならない「奇妙な状況」(ハリス外相兼国防相)となっているからだ。
アイルランドは軍事的中立政策を掲げ、北大西洋条約機構(NATO)には加盟していない。政府方針の変更に国内で波紋が広がっている。
EU非加盟のノルウェーでは6日、ストーレ首相がウクライナへの財政支援と自国の防衛費の大幅増を発表した。
同国の政府系ファンドは運用資産が19兆クローネ(約260兆円)超と、世界最大級。ウクライナ侵攻を背景とした天然ガス価格の高騰で大量の資源マネーが流入しており、和平への積極的な貢献を求める声が国内外で上がっていた。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマルコム・チャルマース副所長は米ABCニュースに、ウクライナ軍が前線で使用する装備の55%は国産、25%は欧州の供与で、米国の負担割合は約20%に低下していると指摘。ただ「最も殺傷能力が高く重要」なのが米国製兵器で、支援停止の悪影響は「徐々に広がっていく」と警告した。