「若き天才」と英雄視=ディープシーク創業者の素顔―中国 2025年03月07日 15時45分

中国の李強首相との会合に招かれた梁文鋒氏(前列右)=1月20日(国営中央テレビのサイトより・時事)
中国の李強首相との会合に招かれた梁文鋒氏(前列右)=1月20日(国営中央テレビのサイトより・時事)

 低コストで高性能な生成AI(人工知能)を開発したとして、世界に衝撃を与えた中国の新興企業「ディープシーク(深度求索)」。一躍時の人となった創業者、梁文鋒氏は「若き天才」と称賛され、国内外で注目を集めている。習近平国家主席の期待は大きく、官民挙げてAIの推進に取り組む中国では梁氏を英雄視する動きが出ている。その素顔に迫った。
 ◇「村の誇り」
 梁氏の故郷、広東省西部・湛江市米歴嶺村。週末に訪れると、村外から詰め掛けた大勢の人々が実家前や石碑前で記念撮影する姿が見られ、小さな村は「観光地」と化していた。
 近隣の村出身で現在は同省深セン市に住む梁氏の親戚という70代男性は「彼は幼い頃から勉強が得意で、真面目であまり目立たない子だった」と紹介。村内に住む50代女性は梁氏について「誠実な人。今や中国の英雄で、村の誇り。これからの中国の発展は彼が中心になるのでは」と期待を寄せる。
 中国メディアによると、梁氏は1985年生まれ。父親は小学校教師だった。幼い頃から成績優秀で、数学的な思考能力が高かった。全国大学統一入学試験「高考」ではトップの成績で名門・浙江大学に合格。大学院まで進み、情報・通信工学を専攻した。
 梁氏は2015年、AIを駆使して投資を行うヘッジファンド「幻方量化(ハイフライヤー)」を同級生と創設。運用資産は一時1000億元(約2兆円)を超えたとされ、23年に浙江省杭州市でディープシークを設立した。
 ◇少数精鋭、「愛国的」
 ディープシークの社員は約160人。中国トップクラスの大学や大学院出身者が多い。海外留学の経験がない20~30代の「国内組」が中心で、梁氏は「愛国的」と評される。梁氏は中国メディアのインタビューで「優秀な人材にとって最大の魅力は世界で最も難しい問題を解決することだ」と語った。
 中国は「次世代人工知能発展計画」で、30年までに世界トップの水準に引き上げる目標を掲げている。今年の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告は、AI技術と産業の融合を目指す「AIプラス」の取り組みを「持続的に推進する」と表明。中国の行政機関や企業では、ディープシークのAIを導入する動きが急速に広がっている。
 梁氏は1月に李強首相、2月には習氏との会合に招かれた。習政権が梁氏を取り込もうとする思惑が透ける。全人代の婁勤倹報道官は4日の記者会見でディープシークに言及し、「AI分野での中国企業の台頭を示している」とたたえた。
 「中国のAIはいつまでも追随者の立場に甘んじていられない」。梁氏は米国を念頭にこう訴え、米国の技術に依存しない形での中国AI産業の発展に自信を深めている。 

その他の写真

ディープシーク創業者、梁文鋒氏の故郷にある石碑前で記念撮影する人々=1日、中国広東省湛江市米歴嶺村
ディープシーク創業者、梁文鋒氏の故郷にある石碑前で記念撮影する人々=1日、中国広東省湛江市米歴嶺村
ディープシーク創業者、梁文鋒氏の実家を訪れる人々=1日、中国広東省湛江市米歴嶺村
ディープシーク創業者、梁文鋒氏の実家を訪れる人々=1日、中国広東省湛江市米歴嶺村

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