「人間軽視」の停戦交渉憂慮=拘束市民や子供の帰還要請―平和賞のウクライナ団体代表 2025年02月26日 06時13分

ウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」のオレクサンドラ・マトイチュク代表=25日、キーウ
ウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」のオレクサンドラ・マトイチュク代表=25日、キーウ

 【キーウ時事】ロシアのウクライナ侵攻に伴う戦争犯罪の記録に取り組み、2022年にノーベル平和賞を受賞した同国の人権団体「市民自由センター(CCL)」のオレクサンドラ・マトイチュク代表は25日、トランプ米政権が進める停戦交渉で「人間の存在が軽視されている」ことへの深い憂慮の意を示した。キーウ(キエフ)で時事通信のインタビューに応じた。
 この中で、マトイチュク氏は「天然鉱物や選挙、領土譲歩の可能性など政治的な主張は多く聞かれるが、人間に関する言及がないのは問題だ」と述べ、「交渉に人間的な側面を取り戻すのがわれわれの任務だ」と語った。
 CCLは、停戦交渉ではロシアに違法に拘束されたウクライナ市民の解放や連れ去られた子供たちの帰還に関する合意が最優先として、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチなどと共にキャンペーンを展開している。
 マトイチュク氏は「トランプ大統領はこの戦争の犠牲を憂慮しているからロシアと停戦交渉を始めたと言っている。ならばロシアの刑務所で死ぬ(ウクライナ)市民のことも気に掛けなければならない」と強調。さもなければ「拉致された約2万人の子供や違法に拘束された市民はどうなってしまうのか」と訴えた。
 「ロシアによる占領とは単に国旗が変わるということではない」と述べ、その本質は「拷問、レイプ、拉致、アイデンティティーの否定、子供の強制的な養子縁組、(市民を思想信条で選別する)ろ過キャンプ、(殺害した市民を埋葬する)集団墓地」にあると指摘した。戦争犯罪に関しては、他の組織とも連携し、ロシアに占領された地域も含めて全土で情報収集できる体制を構築しており、8万1000件以上を記録したという。
 マトイチュク氏は、昨年にノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に対し「心からの連帯」を表明。ロシアが核の威嚇を繰り返す中、これに屈しないためにも日本被団協の活動は重要だと述べた。 

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