幕引き急ぐ中国、摘発へ圧力=「一帯一路」隠れみの―ミャンマー拠点犯罪 2025年02月25日 05時38分

【北京時事】中国の習近平政権は、タイとの国境に近いミャンマー東部ミャワディの詐欺拠点の摘発を巡り、関係国への圧力を強め、幕引きを急いでいる。拠点の多くは中国系犯罪組織が運営し、強制的に加担させられている外国人も中国人が多い。一部は、習国家主席肝煎りの巨大経済圏構想「一帯一路」を隠れみのにして同地に入り込んだとみられ、習政権の体面を汚しかねない状況だ。
中国では1月、俳優の王星氏がタイで拉致されてミャンマーに連れて行かれ、特殊詐欺の実行を強要された事件を機に問題への注目が高まった。王毅共産党政治局員兼外相は同月中旬、東南アジア10カ国の大使らを呼び出し、取り締まり強化を要請。続いて公安省の劉忠義次官補がタイ入りし、国境地帯を視察するなどして関係当局にハッパを掛けた。
劉氏の行動には「タイの主権を軽視している」と批判も出たが、俳優の事件以降、観光収入の主力である中国人の渡航自粛が続き、タイ側としても全面的に協力せざるを得ない。
今月20日にはミャワディの拠点にいた中国人の送還が始まり、第1陣として200人が帰国。国営メディアは全員を「容疑者」と報じ、中国外務省は「タイ、ミャンマーとの協力で多くの拠点が排除された」(報道官)と成果を誇示した。
もともとミャワディは、中国資本が現地の武装勢力と組み、カジノやホテル建設を進めてきた地域だ。大規模な犯罪拠点となった同地のシュエコッコは、2017年ごろから中国系企業「亜太国際控股集団」が150億ドル(約2兆2000億円)規模の開発に着手。当時は新華社通信も「一帯一路における重要な経済回廊」に貢献する事業と紹介していた。
ただ実態は、開発計画の陰で人身売買や詐欺が横行。報道によると、中国公安省は1月、ミャワディだけで36の中国系詐欺集団があり、10万人以上が活動しているとタイ当局に報告した。
シンクタンク「米平和研究所」は、中国との政治的結び付きが強い東南アジアの国では、中国人の犯罪行為が放置される傾向があると指摘する。詐欺拠点はラオスやカンボジアにも存在するとされ、ミャワディの組織を一掃しても、同様の犯罪が場所を変えて続く可能性がある。