相互関税は「違法」=政権に差し止め命令―トランプ氏、権限逸脱・米裁判所 2025年05月29日 08時38分

ホワイトハウスで相互関税に関する大統領令を掲げるトランプ氏=4月2日、ワシントン(AFP時事)
ホワイトハウスで相互関税に関する大統領令を掲げるトランプ氏=4月2日、ワシントン(AFP時事)

 【ワシントン時事】トランプ米政権が発動した相互関税について、米国際貿易裁判所は28日、「違法で無効」と判断し、差し止めを命じる決定を下した。10日以内に関税を停止するための手続きを取るよう求めた。政権側は即時に控訴したが、判断が覆らなければトランプ氏が看板政策に据える高関税措置に狂いが生じる可能性がある。
 今回の決定は、第2次トランプ政権の関税政策に関する初の司法判断とみられる。米ブルームバーグ通信は世界貿易に数兆ドル(数百兆円)規模のプラスの影響がありそうだと指摘した。
 裁判所が「違法」と判断したのは、大統領が安全保障上の脅威に対処する権限を定めた国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置。相互関税のほか、薬物流入などを理由にしたカナダやメキシコ、中国からの輸入品に対する関税も対象。通商拡大法232条に基づく自動車や鉄鋼・アルミニウムに対する関税は含まれない。
 裁判所は決定で、相互関税について「IEEPAによって大統領に認められた権限を越えたものだ」と指摘。「関税は取り消され、運用は永久に停止される」と結論付けた。上級審で判断が覆らなければ、関税措置は差し止められる。
 米政権は4月、日本を含むほぼ全ての貿易相手国・地域に対し、相互関税を導入。上乗せ分は7月上旬まで90日間の停止期間が設けられたが、一律10%の基本税率は課されたままとなっている。
 今後は連邦高裁で審理される。最高裁まで争うことになれば、決着に時間がかかる可能性があり、高関税による「ディール(取引)」を通じて貿易赤字の縮小を狙う政権の戦略に「大きな打撃になる」(米メディア)ことも予想される。
 もっとも、違法が最終確定したとしても、トランプ大統領が通商拡大法など別の法律を根拠に高関税政策を継続することも可能。トランプ関税の不透明感は残りそうだ。
 政権の高関税政策を巡っては、米中小企業やカリフォルニアなど12州が4月に提訴していた。 

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