パナマ港湾売却阻止へ圧力=米に対抗、香港企業に再考迫る―中国 2025年03月23日 14時21分

【北京時事】香港の複合企業がパナマ運河港湾の運営権を米投資会社に売却する計画を巡り、中国政府が阻止しようと香港側へ圧力をかけている。習近平政権は、事業売却は「国益」に反すると主張。パナマ運河の奪還を目指すトランプ米政権への対抗姿勢をむき出しにしている。
「全ての中国人への裏切りだ」「国家の利益を考えたのか?」。中国政府で香港政策を担当する香港マカオ事務弁公室は今月、売却を批判する中国系香港紙・大公報の論説を2度にわたり公式サイトに掲載した。「一国二制度」下の香港において、同紙は習政権の意向を伝える手段として利用されることが多く、間接的に売却元企業へ再考を迫った形だ。
香港の長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)は4日、パナマ運河の要衝にある2港湾の運営権などを米投資会社ブラックロック率いる連合体に228億ドル(約3兆4000億円)で売ると発表。「中国がパナマ運河を支配している」とのトランプ大統領の不満に対処した格好で、ハチソンに巨額の収益をもたらす取引だ。交渉には同社創業者で96歳の李嘉誠氏も参加し、数週間で話がまとまったと報じられている。
一方、中国側は売却を事前に把握していなかったもようで、いら立ちを強めている。米ブルームバーグ通信は18日、中国当局が売却に関する調査を開始したと報道。国家市場監督管理総局などが、安全保障リスクや独占禁止法違反の有無を調べるという。
ただ、中国側も表立った介入には踏み切りにくい事情がある。香港では2020年に国家安全維持法が施行され、政治や社会の各方面で中国本土との一体化が進む。中国当局の力で国際的な商取引がつぶれれば、外資の香港離れが加速しかねない。中国にとっては、企業が自主的に取引を停止するか、香港政府が差し止めに動く展開が望ましい。
中国側の意をくむように、香港政府トップの李家超行政長官は18日、記者団に「外国政府が経済・貿易において脅迫的手段を用いることに反対だ。いかなる取引も法規制に沿う必要がある」と指摘。米国が売却を「強要した」とのシナリオを念頭に、法的対処の可能性を示唆した。
近く売却の最終的な合意文書が締結される見通し。習政権は今後、香港側への圧力をさらに強めていくとみられる。