非難の応酬、政策論争見えず=韓国大統領選、3日に投開票 2025年06月02日 14時29分

【ソウル時事】韓国大統領選の投票が3日行われ、即日開票される。革新系最大野党「共に民主党」候補の李在明前代表(60)の優位は動いておらず、政権交代が有力視される。李氏と保守系与党「国民の力」候補の金文洙前雇用労働相(73)らが互いを非難し合うネガティブキャンペーンに終始し、対日関係を含む政策論争は最後まで深まらなかった。
尹錫悦前大統領による「非常戒厳」宣言への評価に注目が集まる一方、政策面での争点は見えにくい選挙戦になった。優位な戦いを進めた李氏が失言や論争を避けるため刺激的な発言を抑えると同時に、中道層や保守層への支持拡大を目指して右寄りにシフト。金氏らとの政策的な差異を目立たせなかった。
尹政権の対日政策を「屈辱外交」と批判してきた李氏だが、日韓協力や日米韓連携を重視する外交路線を掲げた。公約では「経済・安全保障・人的交流などで未来志向的な韓日協力関係を持続。歴史問題など敏感な懸案の解決に努力を続ける」と明記した。一方、金氏の公約も「正しい歴史認識に基づき、未来志向的な韓日関係を持続し、推進」と似通っている。与党の選対幹部は「李氏の外交政策はわれわれとそっくり。右旋回の結果だ」と一変した李氏の政策に驚きを隠さなかった。
尹政権が元徴用工問題の解決策を発表して対日関係の改善が進み、トランプ米政権の高関税政策の打撃を受ける日韓の経済協力を期待する声が高まったことも背景にある。野党関係者は「米国の関税政策の影響が世界に広がる中で環境の似通う韓国と日本の協力は不可欠だ」と説明。ただ、「米国への対応や経済政策に比べ、対日関係に対する有権者の関心は高くない」とも指摘した。
政策の差異が少ない中で、非難の応酬ばかりが目立った。李氏は、尹氏を中心とした「内乱勢力」の審判を訴え、金氏について「尹氏のアバター(分身)だ」と攻撃。金氏は5件の刑事裁判を抱える李氏を「監獄に行くべき人だ」と反撃した。保守系野党「改革新党」の李俊錫議員(40)も「李在明氏は法治主義を形骸化させ、王になろうとしている」と訴えた。
尹氏の罷免に伴う短期決戦だったため、与野党の公約集が出そろったのが期日前投票(5月29、30両日実施)の直前。そのことも政策論争が深まらない一因になった。有力紙・東亜日報は社説で、「与野党が合作した暗闇選挙だ」と批判している。