ガザ戦闘、一段の長期化必至=求心力維持へ強硬貫く―イスラエル首相 2025年05月17日 17時45分

イスラエルのネタニヤフ首相=4月29日、エルサレム(EPA時事)
イスラエルのネタニヤフ首相=4月29日、エルサレム(EPA時事)

 【カイロ時事】イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザでの軍事作戦拡大に踏み切ったことで、イスラム組織ハマスの「壊滅」(イスラエルのネタニヤフ首相)を目標とした戦闘の一段の長期化は避け難い情勢になった。停戦を求める国内世論に直面し、後ろ盾である米国との間にすきま風が吹く中でも、ネタニヤフ氏には主戦論を押し通す以外に求心力を維持する方策がないのが実情だ。
 イスラエルとハマスは1月、停戦の「第1段階」に入ったが、延長や「第2段階」への移行を巡る交渉は難航。イスラエルは3月に攻撃を再開し、以降は停戦に向けた大きな動きは伝えられていない。カタールで先に行われた交渉に詳しい情報筋は、イスラエル代表団が「交渉を妨害している」とメディアに不満を漏らした。
 ネタニヤフ氏は新たな作戦で、ガザへの継続的な軍部隊駐留を目指している。エルサレム・ポスト紙(電子版)は今後、予備役を追加投入しながら作戦が段階的に拡大され、年内は続く可能性があると報じた。
 ネタニヤフ氏を巡っては、ガザへの攻撃継続を政権延命に利用していると繰り返し指摘されてきた。国会で過半数を押さえ政権を維持するには、「ガザ入植」を訴える対パレスチナ強硬派の極右政党の取り込みが欠かせない。ネタニヤフ氏は1月の停戦開始時、極右政党の連立離脱という事態に見舞われて不安定な政権運営を強いられ、極右復帰後も基盤は脆弱(ぜいじゃく)なままだ。
 軍事的圧力をかけてもハマスとの人質解放を巡る交渉は進まず、予備役は疲弊。政権への風当たりは強まっている。シンクタンク、イスラエル民主主義研究所が4月に公表した世論調査結果によれば、人質全員の解放の方がハマス打倒より重要だという回答は68%を占めた。人質の家族や支援者の団体も声明で、イスラエルは戦闘を継続することで人質を帰還させる「歴史的な機会」を失っていると訴えた。
 さらに、今月に入ってからはトランプ米政権が人質となっていた米国籍を持つイスラエル軍兵士の解放を巡ってハマスと異例の直接協議を実施。トランプ大統領は直後に開始した中東歴訪でイスラエルを「素通り」した。停戦の実現という外交的成果を得たいトランプ氏と、強硬路線に固執するネタニヤフ氏の擦れ違いが鮮明になっている。 

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