「建国の父」宅、兄弟の遺恨に=取り壊し主張の前首相弟亡命―シンガポール 2025年03月23日 06時05分

シンガポールのリー・シェンロン前首相の弟のシェンヤン氏=2020年6月、シンガポール(AFP時事)
シンガポールのリー・シェンロン前首相の弟のシェンヤン氏=2020年6月、シンガポール(AFP時事)

 【シンガポール時事】シンガポールの「建国の父」として今もたたえられるリー・クアンユー初代首相が死去してから23日で10年となる。その旧宅の取り扱いが、長男のリー・シェンロン前首相と次男の間で遺恨となっている。遺言に従い旧宅の取り壊しを主張する弟は、兄との対立関係を背景に英国に亡命。兄弟は絶縁状態に陥った。
 閑静な住宅街にある旧宅を巡っては、2015年3月のクアンユー氏の死後、取り壊しの指示が遺言に記されていたことが明らかになった。個人崇拝に利用されることを危惧したとされる。次男で実業家のリー・シェンヤン氏は、遺言に従うことを強く主張。当時首相の座にあったシェンロン氏に対し、「政治利用目的で旧宅を残そうとしている」などと公然と批判し、兄弟間の争いが表面化した。
 一方、遺書は複数回にわたって書き換えられたことが後に公表された。当初あった自宅取り壊しの指示は改定版で削除され、最終版で復活したとされる。最終版にはシェンヤン氏の妻が弁護士として関与しており、シェンヤン氏の意向に沿って改変された疑いが取り沙汰された。
 兄弟間の確執は深まり、20年の前回総選挙ではシェンヤン氏が野党を支援。さらに、遺言を巡る偽証容疑で警察が捜査に乗り出したことを受け、シェンヤン夫妻は英国に出国した。同氏は英紙のインタビューで、亡命申請が22年8月に認められたと明らかにしている。
 クアンユー氏の死後、旧宅にはシェンロン氏の妹で、シェンヤン氏の姉のリー・ウェイリンさんが住んでいたが、24年10月に病没。空き家となったこともあり、取り扱いが改めて注目された。シェンヤン氏は、取り壊しを求める考えを改めて表明したが、旧宅は与党・人民行動党の結成ゆかりの場所という歴史的経緯もあり、政府は「遺言や公共性も考慮し、取り扱いを慎重に検討する」方針を示している。 

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シンガポールのリー・クアンユー初代首相の旧宅=2024年10月
シンガポールのリー・クアンユー初代首相の旧宅=2024年10月

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