中国軍砲弾を包丁に=平和願い、観光客に好評―台湾・金門島 2025年03月10日 17時41分

砲弾から作った包丁を見せる呉増棟さん=2月28日、台湾金門県
砲弾から作った包丁を見せる呉増棟さん=2月28日、台湾金門県

 「砲弾は天からの贈り物だ」。皮肉を込めてそう語るのは、台湾・金門島の包丁職人、呉増棟さん(67)だ。包丁の材料は、かつて中国軍が撃ち込んだ無数の砲弾。台湾海峡の平和を願いながら呉さんが作る「金門包丁」は島の特産品となっており、中国人の観光客にも好評だ。
 中国軍は1958年、金門島の奪取を図り、集中砲撃を浴びせた。着弾した砲弾は44日間で47万発以上。砲撃は70年代後半まで定期的に続き、島には今も多数の防空壕(ごう)や坑道が残る。
 「57年生まれの私は砲弾と共に育った」と呉さんは振り返る。58年当時、生後数カ月だった呉さんは防空壕の中で育てられた。子供の頃、砲弾の飛来する音で着弾地点が予想できたほか、砲撃の時間も限られていたため、おおむね落ち着いた日常だったという。集中砲撃の後、砲弾には宣伝ビラが詰められるようになり殺傷力は低下。一方で、材質は包丁に加工するのにうってつけだった。
 呉さんの工房にはこうした砲弾が山積みになっている。砲弾から金属を切り出し、炉で熱し、鍛造、研磨して1本の包丁が完成するまでの時間は20~30分。砲弾1個から約40本の包丁ができる。
 工房には中国からの観光客も訪れ、包丁を島の記念品として買っていく。呉さんは「われわれは皆、両岸(中台)の平和を願っている。殺人兵器を料理の道具に変えるのは平和的でしょう?」と語り、笑顔を見せた。 

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中国軍が撃ち込んだ砲弾から包丁を作る呉増棟さん=2月28日、台湾金門県
中国軍が撃ち込んだ砲弾から包丁を作る呉増棟さん=2月28日、台湾金門県

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