習主席、軍で求心力向上に注力=思想教育と汚職摘発徹底―中国全人代 2025年03月09日 15時46分

8日、北京で開かれた全国人民代表大会(全人代)に出席する中国の習近平国家主席(AFP時事)
8日、北京で開かれた全国人民代表大会(全人代)に出席する中国の習近平国家主席(AFP時事)

 【北京時事】中国の習近平国家主席(中央軍事委員会主席)が、軍で求心力の向上を図っている。開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告では、習氏の指導をさらに徹底させる方針を明記。目指す「世界一流の軍隊建設」に向け、忠誠心を高めていく構えだ。
 5日に公表された政府活動報告では、「政治教育と軍事訓練結合の軍隊整備を持続的に深化させる」と盛り込まれた。昨年はなかった表現だ。
 習氏が掲げる軍強化に向けた思想を、現場まで徹底させる狙いがあるとみられる。中国では軍は共産党の指導下に置かれ、思想教育は今も行われている。それを改めて強調する背景には、軍の規律の緩みへの懸念があるとみられる。
 軍では、高官らの汚職が後を絶たない。2023年夏以降に本格化したロケット軍などを対象とした大規模な汚職調査では、李尚福前国防相、前任の魏鳳和元国防相が相次いで摘発された。昨年11月には、軍の最高指導機関である中央軍事委員会の苗華委員が、「重大な規律違反」で調査を受けていることも明らかになった。
 一方で、厳しい姿勢に軍内部で不満がたまっているとの観測もある。軍機関紙・解放軍報は昨年12月、「集団指導」体制や「党内民主」の必要性を訴える論評を相次いで掲載。軍における習氏の権力集中に異を唱えたとも受け取れる内容で、内外で臆測を呼んだ。
 ただ、専門家の間では「軍での習氏の権力は揺らいでいない」(日本の中国研究者)という見方が大勢だ。習氏は7日、全人代の軍代表の会議に参加し、「腐敗問題を深く掘り下げて調査し、処分する」と改めて強調。汚職摘発の手を緩めない姿勢を示した。 

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