「地震が来たら、高い所へ」=津波の歌伝承するインドネシアの島―東日本大震災14年 2025年03月09日 14時18分

「強い地震が来て、海の水が引いていったら、まず高い所を探しましょう」。インドネシア西部スマトラ島沖の島では、津波への注意を呼び掛ける歌が今も受け継がれている。東日本大震災の発生から間もなく14年。三陸地方の「津波てんでんこ」に似た防災の教えを継承するこの島では、約20年前のスマトラ沖地震・インド洋大津波の際も、人的被害を最小限に食い止めることができた。
スマトラ島北部の西岸沖約150キロに浮かぶシムル島は、スマトラ沖地震の震源地から約60キロしか離れていなかったにもかかわらず、犠牲者は7人。その多くが島外からの訪問者で、当時約8万人いた島民は無事避難したとされる。
そのシムル島で歌い継がれている4行詩が、現地語で津波を意味する「スモン」だ。「これはある村で語り継がれてきた話です」というフレーズで始まり、「地震の後にやって来た、とてつもなく大きな波。村はあっという間に海の底に沈んでしまいました」と続く。さらに大地震発生時に高所へ避難するよう呼び掛け、「このメッセージをよく覚えておいてください」との言葉が添えられている。
この4行詩は、1907年の津波被害を受けて作られた。スマトラ沖地震と大津波で約7万8000人もの犠牲者を出したスマトラ島最北端アチェ州の州都バンダアチェにある津波博物館にも掲示されている。
だが、インドネシアで知っている人は今でも少数派。「スモン」の記事を書いたことがあるというインドネシア人の女性記者は「災害は必ず起きる。被害を少なくするためにも、みんなに知ってほしい」と力を込めた。
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