シリア衝突、死者1000人超=治安部隊、少数派標的に多数殺害か 2025年03月09日 08時37分

【イスタンブール時事】シリア北西部で続く暫定政府の治安部隊とアサド旧政権残党の衝突で、在英のシリア人権監視団は9日、死亡した市民が745人に達したと明らかにした。アサド前大統領と同じ少数派のイスラム教アラウィ派の住民らが主な標的として意図的に殺害されたとみられる。交戦で治安部隊と旧政権を支持する武装勢力合わせて260人超が死亡。一連の衝突に伴う死者は1000人を超えた。
交戦が激しさを増している北西部ラタキア県やタルトス県などの地中海沿い一帯にはアラウィ派が多く住み、旧政権の支持者らが多数残っているとされる。アラウィ派はアサド独裁体制下で優遇されたため、昨年12月の政権崩壊後は、シリア国内の多様な民族や宗教宗派からの報復が懸念されていた。
人権監視団は、市民らが「宗派を理由に残酷に殺害された」と指摘。スンニ派主導の治安部隊を支援する勢力が北西部一帯に押し寄せ、報復や迫害の動きを強めている可能性がある。人口の1割を占めるキリスト教徒も大勢が犠牲になったとの情報もあり、宗派対立が激化する恐れがある。
シャラア暫定大統領は9日、「国の結束と平和を保たねばならない。われわれは共生できる」と述べ、急速に悪化する治安の回復と国民の融和を急ぐ考えを強調した。国営通信は9日、治安部隊が都市部から山間部などに移り、旧政権幹部らを追跡する次の作戦に着手したと伝えた。
AFP通信は、民家に侵入した武装集団に親族を殺害された現地住民の証言として、集団には「外国人も含まれている」と報道。緊張拡大によってシリア情勢の不安定化に拍車が掛かる懸念が強まっている。