自主配給「ノー・アザー・ランド」栄誉＝パレスチナ・イスラエル共同監督作―アカデミー長編ドキュメンタリー賞 2025年03月03日 17時47分
【ロサンゼルス時事】２日に授賞式が開かれた米アカデミー賞で、パレスチナ問題を取り上げた「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」が長編ドキュメンタリー映画賞に輝いた。パレスチナ人とイスラエル人が共同で監督。米国で配給会社が付かない中、監督らが自ら上映を取り付ける自主配給で栄誉をつかんだ。
同作品は、イスラエルによるヨルダン川西岸マサーフェルヤッタからの強制追放にあらがうパレスチナ人の日々を記録。育った土地を追われるパレスチナ人の悲劇が、アカデミー会員の心を動かした。
「不正義や民族浄化に歯止めをかけるよう、本気で世界に呼び掛けた」。パレスチナ人のバーセル・アドラー監督は受賞後、作品に込めた思いを吐露した。２カ月前に生まれた娘が「同じ生活を送らなくて済むよう願っている」とも語った。
イスラエル人のユヴァル・アブラハーム監督は、共同監督の意義を「一緒なら声は強力になる」と説明。自身や家族が脅迫されても「民族的な優位性のない、両者の権利が確保された政治的解決という道がある」と信じ抜いた。
米国は、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスと戦うイスラエルを支援。トランプ大統領はガザを「所有」し、住民を近隣諸国に移住させる構想を掲げる。アブラハーム氏は、そうした米国の政策が「この道を阻んでいる」と批判した。
ハリウッドの映画産業の成長には、ユダヤ人が大きく貢献した。このため、長編ドキュメンタリー部門では「反イスラエル色」の濃い同作品ではなく、ロシアによるウクライナ侵攻を描いた作品が有利だとの下馬評もあったが、はね返した。
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