ウクライナ、遠い「安全の保証」=成果どころか亀裂露呈―なお米頼みのジレンマ 2025年03月01日 15時10分

2月28日、ワシントンで米FOXニュースのインタビューに応じるウクライナのゼレンスキー大統領(AFP時事)
2月28日、ワシントンで米FOXニュースのインタビューに応じるウクライナのゼレンスキー大統領(AFP時事)

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、自国の鉱物資源の権益を巡る米国との合意にまたも至らなかった。ロシアの侵攻が続く中、最大の後ろ盾・米国で支援に消極的なトランプ政権発足後初めての「外交成果」となるはずだったが、首脳会談で露呈したのは双方の亀裂。将来的に侵略されない「安全の保証」は遠のいた。
 「永続的な平和の確立に必要な安全の保証を得るため、米政府はウクライナの取り組みを支援する」。事前に報じられた文書では、米国はサポートするだけとされ、安全を直接保証するとは明記されなかった。
 ゼレンスキー氏は安全の保証を最重視し、先に提示された合意案への署名を見送るなど米側との調整が難航。最終文書に要望が十分に反映できなかったところ、肝心の首脳会談で米国の対ロ接近をけん制してトランプ大統領の逆鱗(げきりん)に触れた。
 ゼレンスキー氏にとっては「選挙なき独裁者」呼ばわりされたトランプ氏との関係修復を急ぐ必要があったが、対面会談が裏目に出た。そもそも停戦後の平和維持部隊の派遣構想で頼りにしているのは英仏で、米国からは「支援」を取り付けるのは難しくなっている。
 最近の記者会見で、ゼレンスキー氏は「ウクライナの平和につながり、本当に私の辞任が必要なのであれば、その用意がある」と発言。北大西洋条約機構(NATO)加盟と引き換えでも構わないと述べ、自身の政治生命を賭しても安全の保証を追求する姿勢を示した。
 トランプ氏はロシアと同調するかのように、ウクライナのNATO入りに否定的立場。それでもなお、米国との結束が弱まれば、攻勢を強めるロシアのプーチン政権を利するというジレンマを抱える。ゼレンスキー氏は会談決裂後、米FOXニュースのインタビューで、トランプ氏への謝罪を拒否する一方で、「パートナーである米国を失いたくない」と強調。「米国の支援なしには(ロシアの侵攻を止めるのは)困難になる」と訴えた。 

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