トランプ関税、中印接近促す=パキスタン巡り温度差 2025年08月24日 14時11分

【北京時事】国境問題を巡って関係が冷え込んできた中国の習近平政権とインドのモディ政権が急接近している。トランプ米政権が掲げる高関税政策への対応で利害が一致しているためだ。インドの対米不信の高まりを好機と見る習政権は、日米豪印の連携枠組み「クアッド」の一角にくさびを打ち込むことを狙い、モディ政権への働き掛けを強めている。
「インドと中国はライバルではなくパートナーだ」。モディ首相は19日、ニューデリーを訪れた王毅共産党政治局員兼外相に自ら会い、こう強調した。今月末に中国・天津で開幕する上海協力機構(SCO)首脳会議への出席を明言し、習国家主席との会談を「期待している」と述べた。
王氏はトランプ政権を念頭に「一方的ないじめ」への共闘を主張。報道によると、ジャイシャンカル外相との会談では、中国が実施しているレアアース(希土類)の輸出規制の緩和に前向きな姿勢を示した。
中印関係は2020年6月、国境付近の軍事衝突で死者が出たことで悪化。18年にはモディ氏が2回にわたり訪中するなど頻繁だった首脳往来も途絶えた。転機は昨年10月、ロシアで5年ぶりに実現した両氏の会談だ。中印両軍は同月中に印北部ラダックの係争地から撤退し、両国間の直行便再開も決まった。
一方、トランプ大統領は今月、ロシアから原油の購入を続けているとしてインドに25%の追加関税を課すと表明。米中は現在、一部関税の停止期限を延長させているものの、交渉で折り合いがつかなければ貿易戦争の再燃もあり得る。
急速に距離を縮める中印だが、パキスタンとの関係は大きな溝の一つだ。王氏は今回、インドの後にアフガニスタンとパキスタンを訪問。中国とパキスタンを結ぶ「中パ経済回廊(CPEC)」のアフガンへの延伸について協議した。
CPECは中国西部からパキスタンを通りインド洋へ至る大規模インフラ整備事業。印パが領有権を争うカシミール地方が含まれ、インドはかねて「主権侵害だ」と猛反発してきた。
中国はパキスタンの主要な武器供給国だ。5月の印パ衝突では中国製戦闘機が実戦に投入された。経済・貿易分野で中国と協力を深めたいインドだが、安全保障面における警戒感は根強い。