利下げへの揺るぎない証拠が必要=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2024年03月21日 10時23分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は3月20日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、フェデラルファンド金利(FF金利)の目標レンジを5.25~5.50%に据え置いた理由について「昨年後半のインフレ率の低下は歓迎すべきことです。しかし、インフレ率が目標に向かって持続的に低下していることを確信するには、ゆるぎない証拠が必要です」と述べ、従前からの主張を繰り返しました。利下げ時期に関しては、「政策金利がこの引き締めサイクルのピークに達している可能性が高く、経済が予想通りに幅広く発展すれば、今年のある時点で金融緩和をし始めるのが適切であろうと考えています」と述べています。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2024年3月20日

 米国経済は、私たちの二重の使命(「最大雇用」と物価の安定)の目標に向かって順調に進んでいます。失業率が大幅に上昇することなく、インフレ率は高水準から低下しました。これは非常に良いニュースです。しかし、インフレ率はまだ高すぎ、インフレ率低下の継続的な進展は確実ではなく、先行きは不透明です。私は、インフレ率を2%の目標に戻すことに全力を尽くしていることを米国民に確信をもって伝えたいと思っています。物価の安定を取り戻すことは、すべての人に恩恵をもたらす力強い労働市場の維持を実現するために不可欠です。

 本日、FOMCは政策金利の据え置きと保有証券の削減の継続を決定しました。過去2年間、私たちは大幅な金融引締めをしてきました。私たちの強力な行動により、政策金利はかなりな引締めの領域に移行し、経済活動とインフレに効果が現れています。労働市場の逼迫は緩和され、インフレの低下傾向が続く中、雇用とインフレの目標達成に向けたリスクは、よりバランスのとれた状態へと移行しています。

 最近の経済指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆しています。昨年第4四半期のGDP成長率は3.3%でした。2023年通年のGDP成長率は3.1%で、これは旺盛な消費需要と供給状況の改善に支えられたものです。住宅セクターの活動は、住宅ローン金利の高騰を反映して昨年は低調でした。高金利は企業の固定投資も圧迫しているようです。

 労働市場は依然として逼迫していますが、需給バランスは改善傾向にあります。過去3カ月間の雇用者数の増加は月平均16.5万人で、前年同期を大幅に下回るペースですが、依然として堅調です。失業率は3.7%と依然低水準。力強い雇用創出は、労働者供給の増加を伴っています。労働力率はこの1年で、特に25歳から54歳の労働力率が上昇し、移民はコロナ大流行前の水準に戻りました。名目賃金の伸びは緩やかになり、求人数は減少しました。雇用と労働者の格差は縮小しているものの、労働需要は依然として供給力を上回っています。

 インフレ率は過去1年間で著しく低下しましたが、長期目標である2%を依然上回っています。12月までの12カ月間、PCE物価指数は2.6%上昇し、変動の大きい食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコアPCE物価指数は2.9%上昇しました。昨年後半のインフレ率の低下は歓迎すべきことです。しかし、インフレ率が目標に向かって持続的に低下していることを確信するには、揺るぎない証拠が必要です。家計、企業、予測担当者を対象とした広範な調査や金融市場の指標に反映されているように、長期的なインフレ期待は依然として十分に定着しているようです。

 私たちは、高インフレが私たちの任務の両面(「最大雇用」と物価の安定)にもたらすリスクに細心の注意を払っており、インフレ率を目標の2%に戻すことに重い責務を託されています。

 過去2年間で、私たちは政策金利を5.4%引き上げ、証券保有残高を1.3兆ドル以上減らしました。私たちの金融引締め政策は、経済活動とインフレに下方圧力をかけています。当委員会は本日の会合で、フェデラルファンド金利(FF金利)の目標レンジを5.25~5.50%に維持し、保有有価証券の大幅な削減プロセスを継続することを決定しました。政策金利がこの引き締めサイクルのピークに達している可能性が高く、経済が予想通りに幅広く発展すれば、今年のある時点で金融緩和をし始めるのが適切であろうと考えています。しかし、パンデミック以降、経済はさまざまな面で予測者を驚かせており、インフレ目標2%に向けた継続的な進展は確実ではありません。経済見通しは不透明であり、インフレリスクには引き続き注意を払っています。適切であれば、現在のFF金利の目標レンジをより長く維持する用意があります。

 労働市場の逼迫が緩和し、インフレ率の低下傾向が続いているため、雇用とインフレの目標達成に向けたリスクはよりバランスの良い状態に移行しています。私たちは、金融政策を早急にあるいは過度に緩和すれば、これまでのインフレ率の改善傾向が逆転し、最終的にはインフレ率を2%に戻すためにさらなる金融引締め政策が必要になる可能性があることを承知しています。同時に、金融緩和が遅すぎたり少なすぎたりすれば、経済活動や雇用を不当に弱める可能性があります。当委員会はFF金利の目標レンジの調整を検討する際、入ってくるデータ、進展する見通し、リスクのバランスを注意深く評価します。当委員会は、インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えています。私たちは引き続き、会合ごとに意思決定を行っていきます。

 最後に 私たちは、私たちの行動が全米の地域社会、家庭、企業に影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、私たちの公的使命に奉仕するものです。私たちFRBは、「最大雇用」と物価安定の目標を達成するために全力を尽くします。

■関連記事
3月20日、FRB声明=FF金利、5.25~5.50%に据え置く

■関連情報(外部サイト)
FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)