利上げ再開、予断許さず=トランプ関税、世界経済に打撃―物価高続くリスクも・日銀 2025年06月03日 18時56分

日銀は昨年3月に大規模な金融緩和に終止符を打ち、同7月、今年1月に追加利上げに踏み切るなど正常化を進めてきた。ただ、トランプ米政権による高関税政策が世界経済に打撃を与える可能性は否定できず、さらなる利上げのタイミングは予断を許さない状況だ。国内では食料品を中心に価格高騰が鮮明となっており、物価高が長引くリスクもある。日銀の政策運営が一段と難しさを増すことも考えられる。
「(日銀の)見通しが実現していくか、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していく」。植田和男日銀総裁は3日の内外情勢調査会の講演で、トランプ氏の関税政策の影響を慎重に見極めていく考えを示した。
米国の高関税を受け、製造業を中心に国内の輸出企業などには収益悪化の恐れがある。こうした企業で冬のボーナスや来年の春闘の賃上げが伸び悩めば、日銀が目指す賃金と物価がともに上昇する「好循環」のシナリオが行き詰まりかねない。
一方、物価は日銀が目標とする2%を上回って推移している。4月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は、コメなど食料品の値上がりもあり、前年同月比3.5%上昇と5カ月連続で3%台の伸びを記録した。値上げが相次ぎ消費者マインドは悪化している。
植田総裁は「わが国経済は下押し圧力を受けつつも持ちこたえ、賃金と物価が相互に緩やかに上昇していくメカニズムも途切れることはない」と述べ、利上げ路線は維持する考えを強調した。ただ、「トランプ関税」により成長率が鈍化する中、物価高が進行すれば、利上げに踏み切るのはより難しい判断となる。ある日銀幹部は「物価高だけに飛びついて政策変更はできない」と指摘している。