政治動画がビジネス化=選挙とSNSで韓国専門家 2025年05月31日 17時45分

インタビューに答える韓国・尚志大の宋※(※タマヘンに景)載教授=27日、ソウル
インタビューに答える韓国・尚志大の宋※(※タマヘンに景)載教授=27日、ソウル

 【ソウル時事】韓国では2000年代以降、インターネットによる選挙活動が次第に拡大し、最近では政治問題を扱うユーチューブの番組が全盛だ。6月3日に大統領選を控え、SNSと選挙の関係に詳しい韓国・尚志大の宋※(※タマヘンに景)載教授に背景や影響について聞いた。
 ―選挙で動画が使われるようになった経緯は。
 動画が選挙に活用されるようになったのは2007年大統領選からだ。当初は政党や候補者の広報という形だったが、徐々に一般人にも使用が広がった。
 テレビ、新聞、通信社という既存メディアではない市民がユーチューバーとして動画を生産し、言論に直接参加するようになった。これは良い点にもなり得るが、政治動画を作る人が多くなり政治に利用されるようになった面もある。
 当初は1人で放送する形だったが、組織化され、ビジネス化するようになった。17年の朴槿恵元大統領の弾劾(罷免)を契機に保守と革新の両極化が深まり、保革のユーチューバーの収益基盤が形成された。マスコミの役割を果たしていると考えるユーチューバーも多い。
 ―世論の両極化に影響したか。
 韓国では元来、政治選択をする上で、(1)地域(2)世代(3)理念の三つの変数があったが、インターネットの登場により、地域が弱まった半面、理念が強まったと言われる。
 ネットにより保守と革新の対立が生まれたというのは性急な表現だが、(検索結果を優先表示する)アルゴリズムにより政治的に共感できるコンテンツだけに接するようになったことは問題だ。
 ―ネット上の偽情報が増えたことによる影響は。
 選挙とは、政治家や政党の情報を合理的、理性的に判断するものだが、偽情報はそれを破壊する。事実ではないのに、事実だと思って投票することの被害は深刻。偽情報も巧妙になっている。
 ―罰則を強化すべきか。
 韓国の公職選挙法は既に偽情報に対する罰則が強力と言える。表現の自由に抵触する可能性があるため、社会的な議論と合意が必要だ。 

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