30年の責任、問われた自民【25参院選】 2025年07月21日 02時52分

物価高対策が大きな争点となった今回の参院選で、野党各党は、バブル崩壊後、経済の低迷が続いた「失われた30年」からの脱却を掲げ、消費税を含む減税や社会保障負担の軽減などを訴えた。これに対し、自民党は、厳しい財政状況や社会保障の財源確保を理由に消費税減税を否定し、給付金や賃上げなどで物価高に対処することを力説。政治の安定が必要と強調した。失われた30年のほとんどの間、政権を担った自民党の敗北は、その責任を問われたと言える。
「30年間、経済のパイは大きくならなかった」「財源がない、財源がないと言い続けた結果が失われた30年だ」。大幅に議席を伸ばした国民民主党や参政党は街頭で、自民、公明両党の責任を追及。経済政策の転換を繰り返し訴えるとともに、「投票に行くことで政治を動かそう」と呼び掛けた。
バブル崩壊以降、日本経済は低成長が続き、国際競争力は低下。賃金も伸び悩んだ。多くの経済指標が、各国に追い越された「日本の一人負け」を示している。ただ、物価が落ち着いていたこともあり、「政治とカネ」が主要な争点となった昨年10月の衆院選を除き、多くの国民は国政選挙で、政権に不満をぶつけることは少なかった。失われた30年の「実態」に気付かなかったとも言えよう。
確かに、自公が与党に復帰した第2次安倍晋三政権以降、歴代政権は賃上げを重視。近年は中小を含め、高い賃上げが実現した。しかし、それを上回る物価高で、実質賃金は低下。国民の生活は、苦しくなった。こうした状況下、行われたのが参院選だ。
前回と比べ、投票率が大幅に伸びたのも、30年の「実態」に気付いた有権者が、投票所に足を運び、「継続」より「変化」を求めた結果だろう。
野党が議席を大きく増やしたことで、政治の混迷が深まりかねない。一方で、物価高対策は急務だ。参院選で示された民意を尊重し、「失われた30年」からどう脱却するのか。与野党は改めて知恵を出し合い、早急に実行することが求められている。(時事通信解説委員長・高橋正光)。