統制強化、急激に「中国化」=民主派拘束、言論の自由後退―国安法施行から5年・香港 2025年06月30日 19時14分

香港政府トップの李家超行政長官=2024年8月、ハノイ(EPA時事)
香港政府トップの李家超行政長官=2024年8月、ハノイ(EPA時事)

 【香港時事】香港で国家安全維持法(国安法)が2020年に施行されて30日で5年となった。中国主導による同法施行で社会統制が強化され、「一国二制度」は形骸化。「香港の中国化」が急激に進み、言論・報道の自由などは一気に後退した。
 「(国安法は)香港の暴力を食い止めて混乱を抑制し、われわれが待ち望んでいた安全をもたらしてくれた」。香港政府トップの李家超行政長官は30日付の地元各紙への寄稿でこう強調。「香港社会は秩序を回復し、経済発展は正しい軌道に戻った」と述べ、中国共産党指導部の言い分をなぞる主張を展開した。
 香港では19年、容疑者の中国本土への移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案をきっかけに大規模な反政府デモが発生した。危機感を強めた習近平政権が同法を導入した。
 国安法施行後、反中的な論陣を張っていた香港紙・蘋果日報(リンゴ日報)や民主派ネットメディアは、相次いで廃刊や運営停止に追い込まれた。警察当局は同紙創業者の黎智英氏や周庭氏、黄之鋒氏といった著名民主活動家らを次々と拘束。過去5年間で同法違反容疑による逮捕者は330人超に上る。
 行政長官や議会の選挙制度も大幅に変更された。中国指導部が認める「愛国者」以外は立候補できなくなり、立法会(議会)や区議会は親中派がほぼ独占。民主派は政治の舞台から排除された。
 昨年3月にはスパイ行為などを取り締まる国家安全条例が施行され、反政府的な言動に対する締め付けはさらに強まっている。
 今年6月には中国政府直轄の治安機関「国家安全維持公署」が香港で初めて国安法違反事件の捜査を行ったことも明るみに出た。同署は容疑者を中国本土の裁判所に起訴することもでき、社会統制のさらなる強化が懸念されている。 

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中国の習近平国家主席=17日、アスタナ(カザフスタン大統領府提供)(EPA時事)
中国の習近平国家主席=17日、アスタナ(カザフスタン大統領府提供)(EPA時事)

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