中東情勢に高まる懸念=米関税に続く「頭痛の種」―東アジア 2025年06月21日 15時12分
【北京時事】東アジアで中東情勢の先行きを懸念する声が強まっている。欧州や北米と比べ、原油調達先として中東への依存度が高いことから、影響が自国経済に大きく跳ね返るためだ。トランプ米政権の高関税政策に続く新たな「頭痛の種」になっている。
「イスラエルによる軍事行動で中東情勢が急激に緊迫した。軍事衝突は問題解決につながらない」。中国外務省によると、習近平国家主席は17日、訪問先のカザフスタンで、イスラエルに攻撃の即時停止を訴えた。アジア各国は相次いで緊張緩和を求める声明を公表している。
ロイター通信や日本の経済産業省によると、原油の中東依存度は日本が9割超と際だって高いが、中国や韓国も4~7割を中東に頼る。一方、欧州や北米は域内やアフリカ、中南米など中東以外の比重が大きい。各国の製油所は調達先の油質に合わせて設計されているため、輸入先の変更は容易ではないという。
北京の東南アジア外交筋は「中東の混乱で大きな打撃を受けるのはわれわれだ」と嘆く。「イスラエルが攻撃を続け、(東アジアへ向かうタンカーが多数通過する)ホルムズ海峡をイランが封鎖に踏み切れば最悪のケースとなる」と指摘。東アジア各国はトランプ米政権から高関税の標的になっており、「二重の打撃だ」(別の外交筋)といった声も上がる。
イスラエルと敵対するイエメンの武装組織フーシ派は6月中旬、イランと連帯すると表明。もう一つの要衝である紅海とアデン湾をつなぐバベルマンデブ海峡で外国船への攻撃強化をちらつかせた。ある日系海運企業の担当者は、「当面は様子見だ」としながらも、リスクが高まった場合、ルートを見直す必要があると険しい表情を見せた。
1バレル=60ドル台で推移していた原油価格はイラン攻撃を受け、一気に70ドル台へ跳ね上がった。市場では、ホルムズ海峡が封鎖された場合、価格が120ドルを超えるとの見方も出ている。