【2025年6月16日~17日】総裁定例記者会見(一部抜粋・要約) 2025年06月19日 08時47分

総裁記者会見一部抜粋・要約(2025年6月18日)

1.今回の金融政策決定会合の内容について

  • 無担保コールレート・オーバーナイト物を0.5%程度で推移するよう促す、というこれまでの方針を維持することを全員一致で決定
  • 長期国債買入れの減額計画について、月間の買入れ予定額を2026年1~3月までは原則として毎四半期4,000億円程度ずつ、26年4~6月以降は原則として毎四半期2,000億円程度ずつ減額し、27年1~3月に2兆円程度とする計画を賛成多数で決定
  • 柔軟性を確保する観点からは、来年6月の決定会合において、新たな減額計画の中間評価を行うこととした。中間評価では本日の会合同様、それまでの減額の経験も踏まえ、国債市場の動向や機能度を点検する方針
  • 今回の減額計画を維持することが基本と考えているが、点検の結果、必要と判断すれば、適宜計画に修正を加えることになる。また、その時点で、2027年4月以降の国債買入れの方針についても検討し、その結果を示す予定
  • 加えて、これまでと同様、通常の市場の動きとは異なるようなかたちで、長期金利が急激に上昇するといった例外的な状況においては、市場における安定的な金利形成を促す観点から、機動的に国債買入れの増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。なお、必要な場合には、決定会合において、減額計画を見直すこともあり得ると考えている。

2.経済・物価動向について

  • わが国の景気の現状については、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断した。先行きについては、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。
  • 物価については、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足元では3%台半ばとなっている。先行きについては、既往の輸入物価上昇や、このところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は成長率が高まるもとで、人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想される。展望レポートの見通し期間後半には、物価安定目標と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
  • 見通しを巡るリスク要因としては様々なものがあるが、特に各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある

3.国債買入れの減額計画について、26年4月以降に四半期毎の減額幅を2,000億円にした理由

  • 国債買入れの減額計画の基本的な考え方はこれまでと同じで、すなわち、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切と考えている。そのうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにするためには、国債買入れ額を更に減額していくことが望ましいと考えられる。
  • 一方で、国債買入れの減額が進展する中で、今後の減額ペースが速過ぎると、市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もあるとみている。本日の会合では、市場参加者の意見も参考にしつつ、この両方の考え方のバランスを勘案し、国債市場の安定に配慮したかたちで市場機能の改善を進めていけるよう、来年の1~3月までは[毎四半期]4,000億の減額を続け、26年4月以降は月間買入れ予定額を、[毎四半期]2,000億円ずつ減額して、27年1~3月に2 兆円程度とするということが適当と判断した

4.足元のインフレ率は3%を超えており、5月の展望レポートを出したときと比べて物価上振れリスクは高まっていると考えているか

  • 本日の会合では、前回会合時点からわが国の経済・物価を巡る大きな構図に変化はないと判断した
  • 直近の消費者物価の上昇率は3%を超えているが、これにはこれまでの輸入物価上昇や米を含む食料品価格上昇が大きく影響している。こうした物価上昇が国民生活にマイナスの影響を与えていることは、十分に認識している。
  • 先行きについては、これらの影響は減衰していくと基本的には考えている。ただ、物価を巡って上下双方向のリスクがあるとみている。コストプッシュによる物価上昇が、人々のマインドや予想物価上昇率を介して、基調的な物価上昇率に二次的な影響を及ぼす可能性があることも認識しておく必要がある。
  • そのうえで現時点では、各国の通商政策等の今後の展開や、その影響を巡る不確実性がきわめて高いことを踏まえると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きいと判断している。
  • 日本銀行としては、今後明らかとなるデータや情報を引き続き丁寧に確認し、経済・物価情勢を点検していきたいと思っており、不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえると、各種のデータに加えて、本支店を通じて得た企業ヒアリング情報を含め、できるだけ幅広い情報に基づいて分析を行うことが従来以上に重要となっていると考えている

5.データの改善がなかなか追い付いてこないけれども、見通しとしては上がっていくという見通しがついた段階でもう利上げという判断はあり得るのか

  • 今後の金融緩和度合いの調整を判断するに際してのデータについては、難しい局面にあり、センチメント関係の指標は世界的に今悪いものが割と増えてきている。一方でハードデータについては、いろんな理由があるが、まだしっかりとしているという大まかには感じかと思う。
  • ですので、現状は、悪いのが良くなってきたところ、そのどこのタイミングで利上げをするのかという話のまだ手前にあって、悪くなっていない段階である
  • ただし、例えばタイミング的にいえば、今年の後半(7月以降)、いくつかのデータに悪い動きがみられるんではないかというふうに予想している人が多いかと思う。そういう動きがどれくらいになっていくか、われわれの見通しとの関係で、それとの判断、比較において見通しが実現しそうかどうか。その判断次第では、はっきりとそこから先もう1回上向きに転じるっていうところが確認できなくてもという質問の点は、確か 1、2回前にもそう答えたと思うが、その通りかと思う。見通しの確度次第ということになるかと思う。

[ゴールデン・チャート社]


■関連リンク

FED&日銀ウォッチ

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

総裁記者会見要旨(2025年6月16日、17日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)