「一国二制度」が形骸化=習政権、反中勢力を一掃―香港国安法5年 2025年06月30日 15時08分

【北京時事】中国の習近平政権は「国家の安全」を最優先とし、反中国勢力を一掃するため香港国家安全維持法(国安法)の導入に踏み切った。香港に高度な自治を認めてきた「一国二制度」が形骸化する結果を招いたが、「背に腹は代えられなかった」(外交筋)。特にデモの暴徒化を問題視し、混乱が制御不能に陥る前に手を打った。
「国安法で反中国分子に強力な打撃を与えた」。中国政府で香港政策を担当する香港マカオ事務弁公室トップの夏宝竜主任は、21日に香港で開かれた施行5年の記念フォーラムで、こう胸を張り、国家安全の確保がいかに重要かを強調した。
英植民地の香港が中国に返還されたのは1997年。中国政府はそれ以降、共産党に対する香港市民の恐怖感を払拭することに努めた。経済支援により香港がチャイナマネーで潤うと、中国政府への親近感は増した。一方で、親中派と対立する民主派を抑え込んで「アメとムチ」の統治を実施。ムチの集大成となったのが国安法制定だった。
習政権が国家の安全を重視するのは共産党体制維持のためで、中国本土では社会の統制を強化してきた。香港には社会主義統治が及ばず、民意を一定程度尊重してきたが、2019年以降の騒乱が「国家の安全を損なった」(夏主任)と見なし、強引に国安法を制定。国際社会では衝撃が広がり、「香港は一国一制度になった」と批判された。
一国二制度はもともと、中国による台湾統一の仕組みとして考案された。統一後も社会制度を変えないと確約することで台湾住民を安心させる狙いがあった。しかし、国安法で香港社会の空気が一変したのを目の当たりにした台湾の人々が、一国二制度での統一を受け入れる見込みは大幅に後退したと言え、台湾問題の解決をこれまで以上に難しくする結果を生んだ。