文化交流が関係下支え=権容ソク・一橋大大学院准教授―日韓国交正常化60年 2025年06月21日 14時29分

インタビューに応じる権容※(※夾の人をいずれも百に)・一橋大大学院准教授=13日、東京都中央区
インタビューに応じる権容※(※夾の人をいずれも百に)・一橋大大学院准教授=13日、東京都中央区

 日韓国交正常化を定めた基本条約が調印されて22日で60年。歴史認識などで葛藤を抱えながらも、近年は大衆文化を基軸とした市民レベルの交流が活発化している。その意義や今後の課題について、日韓の文化交流に詳しい権容※(※は夾の人が百)・一橋大大学院准教授に聞いた。
 ―日韓の文化交流はどのように深まったか。
 韓国では軍事政権下の1980年代から若者の間でひそかに日本のポピュラー音楽やアイドル文化が消費された。双方の文化交流が進むのは2000年代に日本で「韓流」ブームが起きてからだ。
 韓国では日本文学の人気が高く、近年は「ミニマリズム」や「おひとりさま」といった日本で話題の概念が韓国の若者のライフスタイルに影響を与えている。一方、日本では韓流はかつて中高年女性を中心に受容されたが、Kポップブームで特に15年以降、若者が韓国文化を先進的なものとして捉え、好むようになった。
 若い世代ほど政治状況にあまり影響を受けない傾向にある。日韓に文化面の相思相愛が生まれ、交流の双方向性が完全に定着した。こうした市民レベルの関係が、政府間に問題が生じてもレジリエンス(回復力)をもたらすようになった。
 ―韓国経済紙・マネートゥデーの2月の世論調査では、「日本に好感がある」と答えた人は47%に上った。一方、日本の内閣府による昨年10~11月の調査では、56.3%の人が韓国に「親しみを感じる」と答えた。
 歴史的な記録だ。18~29歳で韓国の66%、日本の72.5%が、30代では両国とも59%が好感を感じると答えている。ここまで肯定的な感情を持つようになったのは文化が下支えしてきたためで、今後も続くのではないか。
 ―韓国大統領選では対日政策が争点にならなかった。
 反日を主張しても票にならないからだ。日韓には米国の高関税政策への対応や中国との経済関係強化といった共通の課題があり、李在明政権としては、日本との良好な関係を維持し、課題に立ち向かいたいところだろう。
 ―成熟した日韓関係を築くために何が重要か。
 日本では韓国のポップカルチャーしか消費しない場合が多い。日韓は少子高齢化やジェンダー問題など類似した課題を抱え、互いに参考にすべき相手でもある。韓国の歴史や政治、社会について理解できるようなコンテンツを楽しんでみるのもよいのではないか。
 一方、政府レベルでは歴史問題の解決は難しいにせよ、文化協力の促進や「半導体同盟」といった経済面での連携、学生交流の活発化などを盛り込んだ首脳宣言を出せるとよいだろう。 

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