【2024年9月19日~20日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2024年10月01日 17時30分
金融政策決定会合における主な意見(2024年10月1日)
1.金融経済情勢に関する意見
(1)経済情勢
- わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。
- わが国経済は、足もと緩やかな回復を続けているほか、物価も着実に上昇しており、概ね想定通りの動きとなっている。この現状から、これまで実施してきた一連の政策変更が金融経済情勢に負の影響を及ぼす兆候はみられていない。
- 国内の賃金・消費・設備投資・企業収益・物価などの最近の指標は、いずれも7月の利上げの適切さを示す内容となっている。
- 米国経済やFRBの利下げペースに関する不確実性が増しており、わが国の為替や企業業績に負の影響を及ぼす可能性に注意が必要である。
- 米国経済は、家計や企業のバランスシートが健全で金融環境も安定しており、ソフトランディングを想定しているが、雇用を中心に底入れが確認できるまで注意深く見極める必要がある。
- 米国経済はソフトランディングする可能性が高いが、そのための利下げの幅によっては、ドル安・円高、株安となるリスクがある。この点の見極めには、なお時間を要する。
- 米国の新政権の下で財政の拡大、移民の制限、保護貿易の強化などの政策がとられる場合、インフレが再燃し、米国の中長期の金利が上昇する展開も考えられる。
- 8月来の金融市場の変動が経済・物価に与える影響は大きくなく、経済・物価は見通し通り、オントラックで進んでいる。次回利上げに向けて、当面、①消費者物価、②来年の春闘に向けたモメンタム、③米国経済の推移に注目している。
- 従業者の7割が働く中小企業は、防衛的賃上げが多く、稼ぐ力は力強さに欠け、消費者の節約志向を生む。将来不安の払拭に必要な実質賃金増加の定着に向けて、成長志向の中小・中堅企業の設備投資が積極化するか確認する必要がある。
- 円安修正が急速に進むもとで、原材料価格低下に伴う価格転嫁の巻き戻しや輸出数量の減少が続き、企業業績、賃上げ意欲や個人消費に影響することを懸念している。
- 身近なものの価格が大幅に上昇してきた中で、需要が維持されるかが重要である。賃金の動向を重視しているが、コロナ禍以降、消費者の行動様式が変容していると考えており、引き続き分析を充実させていくことも重要である。
(2)物価
- 消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
- 円高進行や原油価格下落から、物価上振れリスクは後退しているが、再びデフレに戻る状況ではない。
- これまで長く続いてきた実質賃金低下による実質消費の押し下げが、足もとようやく和らぎつつある可能性がある。他方で、消費者の側にはまだ価格は上がらないのが当然という意識が根強く残っているようにもみえる。そうした意識が確かに薄らぎつつあるのか否かについては、今後もよく注視する必要がある。
2.金融政策運営に関する意見
- 経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方に変わりはない。もっとも、金融市場は引き続き不安定な状況にある。政策判断に当たっては、内外の金融市場の動きそのものだけではなく、その変動の背後にある米国をはじめとする海外経済の状況などについても、丁寧に確認していくことが重要である。
- 当面は、米国はじめ海外経済や金融資本市場の動向と、それらが見通し・リスク・確度に及ぼす影響を見極めるべき局面である。最近の円安修正に伴って、輸入物価上昇による物価上振れリスクも減少しているので、見極めるための時間的余裕はある。
- 一定のペースで利上げをしないとビハインドザカーブに陥ってしまうような状況にはないので、金融資本市場が不安定な状況で、利上げすることはない。
- 「物価安定の目標」が実現しておらず、金融経済情勢を巡る不確実性が払拭できない中、現時点では本格的な引き締め政策への転換を連想させるような追加的な政策金利の変更は望ましくない。
- 海外経済の不確実性が高まっただけに、市場変動の影響も見極めるため、当面は海外・市場動向を見守り、金融緩和の一段の調整は不確実性が低下した段階にすることが妥当である。現在の緩和的な金融環境を粘り強く続ける我慢の局面と言える。
- 政策金利は、見通しに大きなマイナスの変化がないことが確認できるのであれば、時間をかけすぎず、引き上げていくことが望ましいとの考えは不変である。ただし、利上げ自体を目的とはしていない。日本経済の健全な成長に対する期待に見合う水準程度まで徐々に上げていけることが理想である。センチメントが実体経済に及ぼす影響も考慮し、政策変更には適切なタイミングを選ぶ必要がある。
- 経済・物価がオントラックで推移していく場合、早ければ2025年度後半の1.0%という水準に向けて、段階的に利上げしていくパスを考えている。したがって、今回、政策金利は現状維持でよい
- 今後の政策運営は、下方リスクに十分配慮し、データを慎重に確認して進める必要がある。
- 世界経済の下振れリスクとともに不確実性も高まった。市場にサプライズを起こさぬよう、日本銀行として、実体経済の変化の予兆や進捗を示して市場・企業の理解を高めたうえで、データの変化を点検し、改善に応じて金融政策を修正する、データディペンデントな姿勢について、浸透を図ることが重要である。
- 追加的な利上げを行う局面では、政策スタンスを始め、市場との対話を従来以上に丁寧に行う必要がある。
- 長らく利上げを行っていなかったこともあり、言葉に対する日本銀行と市場の共通理解が薄れてしまっている面がある。市場とのずれが生じない発信、ずれが生じた場合の適時の修正等、コミュニケーションの改善に努めるべきである。
- 経済状況の進展などによって日本銀行の経済に対する見方に変化が生じ、市場の見方との間に齟齬が生じる可能性がある場合には、そのギャップを埋めるべく、可能な限り丁寧なコミュニケーションを行う必要がある。
- 基調的な物価上昇率や経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に関するコミュニケーションについて、丁寧な情報発信が必要である。
3.政府の意見
(1)財務省
- 持続的な成長実現のため、政府としては、あらゆる政策を総動員し、物価と賃金の好循環の拡大を図る。
- 予算編成にあたっては、「骨太方針2024」に沿って、経済成長と財政健全化の両立を図っていく。
- 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。その上で、情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい。
(2)内閣府
- わが国経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復していると判断している。ただし、海外景気の下振れや金融資本市場の変動等に十分注意する必要がある。
- 日本経済は新たなステージに入りつつある。この動きを確実にするため、今後とも機動的な政策運営に取り組む。
- 日本銀行には、引き続き、政府と緊密に連携し、市場とも丁寧にコミュニケーションを図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的実現に向け、適切な金融政策運営を期待する。
以上
[ゴールデン・チャート社]
■関連リンク
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■参考資料(外部サイト)
金融政策決定会合における主な意見(2024年9月19日、20日開催分)(日本銀行)