異次元緩和の弊害、今後顕在化も=木内登英・元日銀審議委員インタビュー 2025年07月16日 18時10分

木内登英 野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト(同社提供)
木内登英 野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト(同社提供)

 日銀は2015年上半期の金融政策決定会合の議事録を公表した。審議委員だった野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは当時、大規模緩和長期化の弊害を懸念。4月8日の会合で国債買い入れ減額を提案した。日銀は昨年、金融正常化に踏み切り国債買い入れ減額にも着手したが、木内氏は弊害が今後顕在化する可能性もあると指摘する。
 ―当時の状況は。
 日銀は前年10月に緩和を拡大したが、物価上昇率はかなりのペースでゼロやマイナスに下がっていった。2年程度で2%の物価目標を達成するのが難しくなり、行き詰まりが見えてきた頃だ。ただ、中央銀行が強い自信を持って世の中にアピールすることで人々のインフレ期待を変えるという政策だったため、執行部は強気の発言を続けていた。
 ―国債購入減額を提案したが否決された。
 実現可能性が低い目標にひも付けた異例の金融緩和を続ければ、さまざまな副作用を生む。一つは国債市場の機能低下、二つ目は金利を低位に抑えることで政府の財政規律を緩めてしまうリスクだ。三つ目は国債買い入れによって金融機関が日銀に預ける超過準備が増えるため、利上げ時に日銀の利払い負担が大きくなり、収益が悪化することだ。将来のリスクを減らす観点から提案した。かなり批判を浴びたが、翌年9月には長短金利操作(YCC)が導入され、政策は軌道修正されていった。
 ―弊害が今後顕在化する可能性は。
 長い目で見ないと分からない。可能性は残されている。国債残高削減にはかなりの時間がかかる。日銀はまだ大量に国債を持っており、緩和的な金融政策が財政規律を緩めているとの見方が強まれば、長期金利が大きく変動して経済に悪影響が及ぶこともあり得る。 

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