「防衛費5%」に日本苦慮=NATO新目標、米の圧力必至 2025年06月26日 19時48分

記者会見する林芳正官房長官=26日午前、首相官邸
記者会見する林芳正官房長官=26日午前、首相官邸

 北大西洋条約機構(NATO)加盟国が、防衛費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げる新目標で合意したことを受け、日本政府が対応に苦慮している。トランプ米政権は、日本を含むアジアの同盟国も欧州と同水準を目指すべきだとの認識を示しており、増額圧力が強まるのは避けられない情勢だ。
 林芳正官房長官は26日の記者会見で、欧州の動きを注視すると強調。その上で、日本の防衛費について「大事なのは金額ではなく防衛力の中身だ」と従来の見解を繰り返した。
 NATOの新目標は、兵器購入など純粋な防衛費を3.5%とし、安全保障関連のインフラ整備など1.5%と合わせ、2035年までに計5%とする内容。欧州の防衛負担に不満を示すトランプ米大統領の要求をのみ、現行目標の2%から大幅に引き上げた。
 防衛省幹部は「日本への増額要求も避けられない雰囲気になっている」と警戒。石破茂首相は24、25両日のNATO首脳会議出席を直前に取りやめたが、参院選を控えて防衛費の引き上げを直接迫られることを嫌ったとの見方も出ている。
 物価高などが争点となる中、さらなる国民負担につながる防衛費の増額論議に注目が集まるのは、首相として避けたいのが本音だ。「5%増」の結論に、政府高官は「結果的に出席しなくてよかった」と胸をなで下ろした。
 日本政府は、防衛費を27年度に対GDP比2%とする目標を掲げている。28年度以降の在り方は今後の議論となるが、日米同盟にたびたび不満を示すトランプ氏が、いつ大幅な増額を迫ってきてもおかしくない状況だ。
 実際、米国防総省のパーネル報道官は今月、中国の軍備増強や北朝鮮の核・ミサイル開発に触れ、「アジア太平洋の同盟国が欧州の水準に追い付くよう行動するのは当然だ」と主張した。
 石破茂首相は23日の記者会見で、防衛費について「必要なものをきちんと積み上げていくことが重要だ」と述べた。日本政府は、米側からの具体的な数値目標の提示を否定するが、7月上旬前後で調整していた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の開催が決まらないなど、先行きには暗雲が漂っている。 

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首相官邸に入る石破茂首相=26日午前、東京・永田町
首相官邸に入る石破茂首相=26日午前、東京・永田町

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