「国難」交渉に石破首相最側近=手腕未知数、人選に疑問の声も―トランプ関税 2025年04月08日 20時53分

石破茂首相は関税措置見直しを巡るトランプ米政権との交渉役に赤沢亮正経済再生担当相を指名した。首相の最側近として知られる赤沢氏だが、閣僚としての経験は乏しく、交渉手腕は未知数。「国難」(首相)打開に向けた交渉が行き詰まれば、首相への批判が強まるのは避けられない。
「赤沢氏の手腕や経験などを踏まえ、首相が判断した」。林芳正官房長官は8日の記者会見で人選の経緯をこう説明。赤沢氏は参院内閣委員会で「関税措置は幅広い影響がある」と指摘し、悪影響の低減に全力を挙げる考えを示した。
日米で担当閣僚を指名して協議を進めることは首相とトランプ大統領の7日の電話会談で決まった。首相周辺は「少なくともけんかのような感じにならなかった」と安堵(あんど)。外務省幹部は「閣僚協議を引き出せたのは大きな一歩。他国はどこも引き出せていない」と成果を強調した。
2012年の第2次安倍政権発足以来、米国との通商交渉には経験豊富なベテラン議員が当たってきた。13年からの環太平洋連携協定(TPP)交渉は自民党の甘利明元幹事長が主導。第1次トランプ政権時代の日米貿易協定交渉は茂木敏充前幹事長が担い、トランプ氏から「タフネゴシエーター(手ごわい交渉相手)」と評された。
日本政府内では米国の今回の措置は日米貿易協定に抵触するとの見方が強い。このため、担当閣僚を巡っては野党からも「タフネゴシエーターを」(立憲民主党の野田佳彦代表)と、交渉経緯を知る茂木氏の起用に期待する声が出ていた。しかし、首相が白羽の矢を立てたのは赤沢氏だった。
首相と同じ鳥取県選出の赤沢氏は国土交通省出身。自民総裁選への首相の挑戦を長年支え続けてきた最側近だ。不遇の時代が続いたが、石破政権で念願の初入閣を果たした。関係者によると、茂木氏らも検討の俎上(そじょう)に上ったが、他の閣僚との関係などを考慮し、見送られたという。
甘利、茂木両氏とも対米交渉当時は経済再生担当相だった。このため、政府・与党内には「経済再生担当相を充てる判断は的確だ」(閣僚)と人選を評価する声もある。公明党の西田実仁幹事長は8日の会見で「(赤沢氏の官僚時代の)対米交渉の経験は心強い」と指摘した。
一方、立憲民主党の小川淳也幹事長は会見で「これまでの経験、知見、人脈などから十分機能するのか」と疑問視。国民民主党の玉木雄一郎代表は「荷が重い」と語った。首相官邸からも「首相は何でも赤沢氏だ」(関係者)と、首相が頼れる人材の層の薄さを嘆く声が漏れる。
近く始まるとみられる対米交渉は難航必至だ。自民幹部は「誰がやっても変わらない。結局、首相とトランプ氏が話し合うしかない」と語るが、交渉が暗礁に乗り上げれば、批判の矛先が首相に向かうのは不可避だ。野田氏は8日の党会合で「局面打開の兆しはない。厳しく交渉するよう促していく」と強調した。
その他の写真
