ポケベル爆破は「テロ」=失明と指切断、憤る被害者―レバノン 2025年05月25日 17時00分

イスラエル軍によるポケットベル爆破作戦で右目を失明したレバノンの看護管理者ビラル・サイードさん=23日、ベイルート南郊
イスラエル軍によるポケットベル爆破作戦で右目を失明したレバノンの看護管理者ビラル・サイードさん=23日、ベイルート南郊

 【ベイルート時事】レバノンで昨年9月、イスラエル軍がイスラム教シーア派組織ヒズボラの構成員を狙ってポケットベルなどを一斉に爆発させ、約40人が死亡し、約3000人が負傷した。その後ヒズボラは劣勢を強いられ、昨年11月にイスラエルと停戦。一方、巻き込まれたという被害者は今も後遺症に苦しんでおり、「これはテロであり、民間人に対する犯罪だ」と憤りを隠さない。
 首都ベイルートの病院で看護管理者として働くビラル・サイードさん(39)は昨年9月17日、勤務中に携帯するポケベルが鳴りやまなくなり、故障を疑った。表示された文字に目を凝らし、音を止めるために両手で二つのボタンを押そうとした瞬間、爆発した。はじけ飛んだ破片で右目を失明し、左目の視力は半分に低下。左手の親指と人さし指を完全に失った。
 これまでに12回手術を受け、顔に突き刺さった破片は除去した。しかし「今でも常に痛みがある」。看護師の人員調整など従来の仕事は続けているが、視力が弱いため夜の勤務に入ることができなくなった。
 イスラエルの情報機関はダミー会社を設立してポケベルに爆薬を仕込み、ヒズボラは気付かずに購入したとされる。ただ、サイードさんが勤める病院は、市場でポケベルを買ったと説明しているという。
 政治団体としても活動するヒズボラは医療機関を運営しており、ヒズボラが購入したポケベルが関連の医療機関に渡された可能性は残る。だが、医療機関の職員がヒズボラの構成員や戦闘員であるとは限らず、国際法の専門家はイスラエルが民間人と戦闘員を区別せずに攻撃したと批判。イスラエル側の専門家は「テロ組織を狙った最も標的を絞った作戦だ」と反論している。
 サイードさんは「神から与えられた試練だ」と被害を受け入れている。一方、左手には当時ヒズボラの最高指導者だった故ナスララ師への忠誠を誓う入れ墨を入れた。被害を機に、対イスラエル闘争を掲げるヒズボラへの支持を強めている。 

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