セサミストリートが一時窮地=政府拠出中止、ネトフリが救済 2025年05月25日 09時25分

【シリコンバレー時事】米公共放送(PBS)などで放送されている人気教育番組「セサミストリート」が一時、存続の危機に立たされた。制作の資金源となる配信契約が難航する中、トランプ大統領による資金拠出中止が追い打ちをかけた。動画配信大手ネットフリックスが救いの手を差し伸べ、無料放送の継続が決まったが、政権の姿勢が子どもの教育機会にも影響を及ぼすことが浮き彫りになった。
「全米の子どもたちは大好きなセサミストリートを引き続き無料で視聴できる」。制作に当たるNPOのウェスティン最高経営責任者(CEO)の声明には、安堵(あんど)感がにじんでいた。
報道によると、NPOと既存ケーブルテレビ局の配信契約は期限切れが迫っていた。トランプ氏がPBSへの資金提供を止め、番組制作への助成金も終了させたことで、NPOは経営難に陥る恐れがあった。
同番組は、公民権運動や貧困撲滅の機運が高まっていた1969年、恵まれない未就学児の教育支援を目的に放送を開始。識字率の向上に貢献した。人種、文化、性の多様性をキャラクターに反映させ、「人種のるつぼ」である米国で相互理解の醸成に取り組んできた。
ただ、多様性を敵視するトランプ氏から、5月の議会演説で「左翼のプロパガンダ」と非難されていた。トランプ氏とセサミストリートを巡っては、同氏が民間人だった1988年以降、番組がトランプ氏をモデルにしたとみられる利己的なキャラクター「ロナルド・グランプ」を数回登場させた経緯がある。グランプはごみが大好きな不動産業者で、「グランプタワー」などを強引に建設する「悪役」として描かれた。
ネトフリは、新シーズンに加え、過去のエピソードの一部も配信するなど、子どもがいる家庭へのサービス訴求を狙う。配信と同じ日にPBSでも放送される。米国のみならず、世界中で幾世代にもわたり愛されてきた長寿番組は、首の皮一枚でつながった格好となった。