パンデミック条約、採択=コロナ禍教訓に対策―WHO 2025年05月20日 16時59分

20日、スイス・ジュネーブで開催中の世界保健機関(WHO)の年次総会で、パンデミック条約が採択され拍手するテドロス事務局長(EPA時事)
20日、スイス・ジュネーブで開催中の世界保健機関(WHO)の年次総会で、パンデミック条約が採択され拍手するテドロス事務局長(EPA時事)

 【パリ時事】世界保健機関(WHO)は20日、スイス・ジュネーブで開催中の年次総会で、将来の感染症のパンデミック(世界的大流行)対策を定めた「パンデミック条約」を採択した。新型コロナウイルス禍を教訓に、締約国は感染の早期封じ込めや保健医療体制の拡充、国際協調を通じた公平なワクチン確保を進める。
 コロナウイルスの猛威が世界を一変させてから5年余り。失敗を重ねた感染症対策は、国際条約の採択という大きな節目を迎えた。
 テドロスWHO事務局長はSNSに「世界の保健の歴史に残る瞬間だ。共に力を合わせていこう」と投稿。トランプ米大統領に代表される孤立主義が勢いづく中、地球規模の課題に多国で立ち向かう姿勢を誇示した。
 条約は採択されたが、国際協調の詳しい仕組みは今後の交渉で決まる。細部が肉付けされ、各国の署名が始まるのは2026年以降。発効には60カ国の批准が必要だ。
 条約は、締約国がパンデミックの「予防、備え、対応」を強化すると規定。先進国がワクチンを囲い込み、途上国で不足したコロナ禍の事態を繰り返さないよう、技術・資金に乏しい途上国を医薬品の研究開発や技術移転、製造、供給などで支えていくとうたった。
 具体的には、製薬企業が新薬開発に必要な病原体情報の提供を受ける引き換えに、緊急事態下で生産した医薬品の最低10%をWHOに無償供与し、途上国へ分配。供給網の整備や途上国の資金調達支援でも、国際協調の枠組みを設けた。 

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