大統領選へ透けた思惑=野党李氏に弾み、与党韓氏に影―韓国 2024年12月14日 21時14分
【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領の弾劾訴追案可決には、次期大統領選を見据えた保守系与党「国民の力」の韓東勲代表と、革新系最大野党「共に民主党」の李在明代表の思惑が交錯した。与党は「非常戒厳」を巡る対応で失墜した信頼の回復が急務。共に民主党は政権交代を見据え与党への攻勢を強める構えだ。
「国民がこの国の主人であることを証明した。『1回戦』の勝利おめでとうございます」。李代表は、弾劾訴追案可決を受け、国会前で行われていた集会に姿を現し、こう誇った。「2回戦」である憲法裁判所の判断が待っているが、尹氏が罷免を免れるのは難しいとの見方が多い。李氏の表情は自信に満ちていた。
現時点で次期大統領選の野党最有力候補と目される李氏にとって、尹氏の弾劾訴追案可決により大統領選前倒しの可能性が高まったことで、出馬へ一歩前進したことになる。
政権の没落は、今後の政局で野党に有利に働くのは確実。戒厳の真相究明などを通じて政権与党への攻撃に力を入れる見通しだ。
ただ、李氏には、市長時代の都市開発を巡る汚職など複数の疑惑があり、現在5件の裁判を抱える。李氏は11月、公選法違反事件の一審で有罪判決を受けており、最高裁で確定すれば、10年間被選挙権が剥奪される。
李氏の最高裁判決は来年前半にも出るとみられており、憲法裁が尹氏の罷免を決める前に李氏の有罪が確定すれば、李氏は大統領選に出馬できなくなる。
一方、与党は2016年に朴槿恵大統領(当時)が弾劾訴追された際に党が賛否を巡り分裂。その後の大統領選で保守系候補が乱立して票が割れ、共に民主党に政権を譲った苦い記憶がある。
このため、次期大統領選の与党有力候補とされる韓氏は当初、弾劾せずに尹政権の延命を図ることで党をまとめ、自ら政局の主導権を握ろうとした。
しかし、尹氏と差別化を図ろうとしながらも、弾劾案に賛成なのか日ごとに発言が二転三転。12日の尹氏の談話を受け、韓氏は党として弾劾案に賛成するよう呼び掛けたが、党は反対の方針を堅持した。世論は弾劾賛成が大多数で、与党のイメージダウンは必至。韓氏の指導力にも大きく傷が付いた。
韓氏に近い議員は20人ほどとされ、国会議員でもない韓氏の党内基盤は強くない。弾劾案の可決は、韓氏の面目を保った形にはなったものの、与党議員の多数が反対票を投じたことは、韓氏の限界も浮き彫りにした。弾劾案可決を受け、党指導部を構成する最高委員5人が辞意を表明し、韓氏の体制は崩壊。「次」に向け暗雲が漂っている。