家族犠牲、なお募る寂しさ=大地震10年、減災教育が課題―ネパール 2025年04月25日 19時52分

【ニューデリー時事】約9000人が犠牲となったネパール中部の大地震から、25日で10年がたった。地域社会に残した傷は深く、喪失感を抱えたままの遺族もいる。専門家は建物の耐震化だけでなく、減災につながる教育の必要性も訴えている。
「時がたつにつれ、父がいないことをますます寂しく感じる」。東部カブレ・パランチョーク郡でソフトウエア会社を経営するマダブ・ドゥラルさん(42)は10年前、父親のゴビンダさん=当時(57)=を地震で失った。就寝中に倒壊した自宅の下敷きとなった。
農家だったゴビンダさんは、家事を全て担っていた。「とても優しく、思いやりのある人だった」。夫を亡くしたマダブさんの母親は、いまだ精神的に不安定な状態という。政府からの支援は自宅の再建費用として支給された30万ネパール・ルピー(約31万円)だけ。家計は厳しい状況が続く。
2015年4月25日に発生した地震はマグニチュード(M)7.8。翌5月にもM7.3の余震が起きた。犠牲者の多くは、家から逃げ遅れた高齢者や子供だった。
特に、安価なれんがや木材でできた古い建物に甚大な被害が出た。政府は20年、建物の耐震性向上を目的とした新たな建築基準を導入した。
ネパールはインドとユーラシアのプレート同士がぶつかり合う「地震の巣」。23年11月にも西部で大きな地震が起き、計160人が亡くなった。将来の大地震を想定し、ハード面に加えてソフト面の備えも必須だ。
国立地震監視研究センターに所属する地震学者ロク・ビジャヤ・アディカリ氏は「地震に対する脆弱(ぜいじゃく)さは地域ごとに異なり、多くの人はまだその危険性に気付いていない」と警鐘を鳴らす。被害を最小限に抑えるには学校での啓発教育が重要だが、そのためのカリキュラムはまだ十分ではないという。
ポーデル大統領は発災10年の声明で、国民に向けた安全対策の啓発徹底を全ての関係者に呼び掛けた。
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