ウクライナで防空兵器枯渇=ロシア攻勢に危機感―イスラエルと対照的 2024年04月17日 14時35分

ドイツ軍の地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」=2023年10月、西部ケルン(AFP時事)
ドイツ軍の地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」=2023年10月、西部ケルン(AFP時事)

 ロシアによる侵攻が長期化するウクライナで、米国製の地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」など防空兵器が枯渇しかけている。空爆から無防備になれば、後方で民間人やエネルギーインフラが被害を受けるだけでなく、前線でロシアの大規模攻勢を許すことになり、ゼレンスキー政権の危機感は強い。
 「ウクライナ人は同様の攻撃の恐ろしさをよく知っている」。ゼレンスキー大統領は14日、X(旧ツイッター)に投稿し、ミサイルや無人機によるイランのイスラエル攻撃に絡めてウクライナの厳しい現状を訴えた。
 背景にはイスラエルが今回、強力な防空網と米英両軍の支援でイランによる攻撃の大半を撃退したのと対照的に、ウクライナは防空兵器がかつてのように潤沢でないという事情がある。
 米シンクタンク戦争研究所などによると、11日未明のロシアによる空爆で、ウクライナは飛来した82発中57発を撃ち落とした。ただ、撃退が比較的容易な無人機の数字が含まれており、ミサイルに限れば42発中18発を迎撃できたにすぎない。少なくともミサイル24発が着弾した計算で、エネルギーインフラに甚大な被害が出た。
 空爆を分析したドイツ紙記者はXで「ウクライナはパトリオットを使い果たし、他の防空兵器も枯渇するか破壊された」と推定した。窮状は支援国にも伝わり、独国防省は13日、「直ちにパトリオットを追加供与する」と発表した。
 ウクライナがうらやむのは、米英両軍が迎撃に参加した点だ。ゼレンスキー氏は15日、通信アプリ「テレグラム」で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国でないイスラエルが防衛されたと指摘。未加盟のウクライナでも「同様のことが可能なはずだ」と支援の強化を呼び掛けた。
 しかし、米英両軍がウクライナを直接防衛することへのハードルは高い。報道によると、キャメロン英外相は15日、ウクライナでもドローンを撃ち落とすことは「NATOとロシア軍の直接衝突につながる」と慎重な立場を示した。 

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