バイデン氏、同盟重視の集大成=大統領選意識し苦心も―日米首脳会談 2024年04月11日 14時48分

笑顔を見せる岸田文雄首相(右)とバイデン米大統領(バイデン氏のXより・時事)
笑顔を見せる岸田文雄首相(右)とバイデン米大統領(バイデン氏のXより・時事)

 【ワシントン時事】バイデン米大統領が岸田文雄首相を国賓待遇でホワイトハウスに招き、手厚いもてなしで日米の絆を内外に印象付けた。力を増す中国を念頭に、インド太平洋における「同盟重視」外交の集大成とした形。ただ、大統領選を11月に控える中、「米国第一」を掲げるトランプ前大統領を意識し国内とのバランスに苦心する姿ものぞいた。
 「彼はステーツマン(尊敬される政治家)」。バイデン氏は10日の共同記者会見で、岸田氏を手放しで持ち上げた。国家元首ではない岸田氏を国賓級の扱いで招待。前日には大統領専用車「ビースト」でバイデン氏の思い出のレストランへと連れ立つ「特別サービス」で、岸田氏を大いに喜ばせた。
 歓待は焦りの裏返しでもある。バイデン政権は2022年の「インド太平洋戦略」で、中国の脅威に直面するインド太平洋地域への関与強化を宣言した。だが、ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が相次ぎ発生。欧州、中東との3正面を迫られ、インド太平洋に振り向ける余力は限られる。隙を突くように、中国は台湾周辺や南シナ海で威圧的な行動を加速させている。
 こうした中、日本をはじめとする地域の同盟国の重みは増した。バイデン氏が国賓や国賓級で招いた首脳5人のうち、4人はインド、韓国、オーストラリア、日本。米国が中心となり各国と個別に同盟関係を結ぶ「ハブ・アンド・スポーク」から、日米韓、日米比など同盟国同士も連携する「格子状」へと戦略を移す中で、「基軸となる日本への期待は特に高い」(米政府関係者)という。
 大統領選が迫り、同盟重視の姿勢には限界もちらつく。岸田氏訪問に先立ち、バイデン氏は日本製鉄のUSスチール買収に事実上の反対を表明した。「買収阻止」を公言し、米労働者に寄り添う姿をアピールしたトランプ氏を意識したことは明らか。共同会見で「労働者との約束を守る」と言及したバイデン氏と、「日米両国にとって良い話し合いになることを期待している」と語った岸田氏には温度差があった。
 外交的孤立主義に傾き2国間のディール(取引)を重視するトランプ氏が返り咲けば、バイデン氏が組み上げた同盟網は瓦解(がかい)しかねない。夏以降、大統領選がヒートアップするのを前に、同盟盤石化に向けた外交の時間は少ない。 

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