「テロと国籍は関係ない」=タジク系歌手訴え―民族憎悪に懸念・ロシア 2024年03月28日 05時24分

ロシアの人気歌手マニジャさん=2021年3月、モスクワ(AFP時事)
ロシアの人気歌手マニジャさん=2021年3月、モスクワ(AFP時事)

 モスクワ郊外で22日夜に起きた銃乱射テロで、実行犯とされる中央アジア・タジキスタン国籍の容疑者4人が拘束されたのを受け、ロシアのタジク人社会に衝撃が走っている。民族憎悪の標的となる懸念があるため、タジク系の人気歌手は「犯人と国籍は無関係だ」と声を上げた。
 歌手はマニジャさん(32)。母国の首都ドゥシャンベで生まれ、タジク内戦中に家族でモスクワへ移住。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)特使に選ばれ、2021年の欧州音楽祭「ユーロビジョン」のロシア代表も務めた。
 中央アジアなど旧ソ連構成国出身の労働移民は、ロシア経済の重要な担い手。だが、極右のヘイトクライム(憎悪犯罪)の標的になることも珍しくない。報道によると、タクシー運転手が予約を受ける際に「タジク人ならキャンセル」と告げられるケースが多発。移民団体は「夜間外出自粛」を呼び掛けた。
 マニジャさんは26日、約60万人のフォロワーを持つインスタグラムに動画を投稿。母国に残って14年前に亡くなった最愛の祖母を追慕し、他人のものは決して奪わないのがタジク人の教えだと強調した。
 祖母が今回のテロを目の当たりにしなかったのは何よりだとし、容疑者4人が受けたという拷問について非難した。「殺人犯と国籍は関係がないと信じる人々から寄せられるメッセージは数多い」と紹介。「暗闇の中でも私たちは人間であり続けなければならない」と涙声で訴えた。 

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