最大野党に解党以上の危機=幹部ら活動、永久禁止の恐れ―タイ 2024年03月24日 14時06分

タイ憲法裁判所の判決後に記者会見する前進党の議員ら=1月31日、バンコク
タイ憲法裁判所の判決後に記者会見する前進党の議員ら=1月31日、バンコク

 【バンコク時事】タイで昨年実施された下院総選挙(定数500)で躍進した最大野党「前進党」が、司法当局によって解党される可能性が高まっている。さらにピター前党首ら幹部や有望な若手が政治活動を永久に禁止される厳しい処分を受ける恐れもあり、大きな危機に直面している。
 前進党は総選挙で、王室への侮辱を罰する不敬罪の改正など革新的な政策を掲げて若者を中心に支持を広げ、151議席を獲得して第1党となった。保守派の反発で政権樹立は失敗したが、高い人気を維持している。
 しかし、憲法裁判所は今年1月、不敬罪改正の公約を「国家転覆に当たり憲法違反」と判断。これを受けた保守派の申し立てを踏まえ、選挙管理委員会は3月、前進党の解党を憲法裁に求めた。結論は数カ月以内に出される見通しで、地元メディアは「解党は既定路線で、保守派による前進党排除の一環だ」と報じた。
 タイの司法は保守派の影響が強いとされ、前進党の前身政党も解党処分を受けた。元選管委員のソムチャイ氏は「解党の場合、(ピター氏ら約10人の)幹部は被選挙権を永久に剥奪される可能性がある」と指摘した。
 国家汚職追放委員会(NACC)も、前進党が2021年に国会に提出した不敬罪改正法案に署名した当時の同党議員らを調査しており、「重大な倫理違反」があったと判断すれば最高裁判所に訴えを起こす。有罪となれば議員の失職や被選挙権の永久剥奪が伴う可能性があり、結論が出るまでには1年以上かかるとみられている。
 前進党は解党処分に備えて後継政党の設立を準備しているが、NACCの調査対象の現役議員は若手の幹部候補を含め約30人に上り、政治活動が生涯禁止されれば大きな打撃となる。ただ、タイ政治の専門家は「前進党への圧力が強まるほど国民は反発し、保守派にとってはプラスとならないだろう」と分析した。 

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