インド隣国へ接近加速=防衛協力強化、切り崩し図る―中国 2024年03月23日 15時56分

中国の習近平国家主席=5日、北京(AFP時事)
中国の習近平国家主席=5日、北京(AFP時事)

 【北京時事】中国の習近平政権は今月、インド隣国の3カ国との防衛協力を強化する方針を示した。中印は国境問題を巡る対立が続く。中国は軍事面や経済面での支援をてこに、伝統的なインド勢力圏の切り崩しを図る考えだ。
 中国国防省は13日、軍代表団が4~13日にモルディブ、スリランカ、ネパールを歴訪し、各国で「2国間の防衛協力推進」について協議したと発表した。3カ国はいずれもインドの影響が色濃い地域。ただ近年は、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた重要インフラ整備などを各地で進め、浸透を図ってきた。
 このうちインド洋の島しょ国モルディブでは、ムイズ大統領が代表団と会見。中国が無償でモルディブに軍事援助する協定が結ばれた。
 モルディブはアジアと中東、アフリカを結ぶシーレーン(海上交通路)の要衝だ。昨年11月に親中路線のムイズ大統領が就任すると、習政権は両国関係の格上げを宣言。インドからの「引きはがし」を加速させた。協定の内容は不明だが、モルディブでは駐留インド軍部隊の5月までの撤収が決まっており、中国が安全保障の空白を埋める格好となりそうだ。
 今月25日からは、スリランカのグナワルダナ首相とネパールの外相が訪中する。中国側の招待で、習国家主席や王毅共産党政治局員兼外相らと関係強化について話し合う見通しだ。
 中国はスリランカの最大債権国。ネパールでは今月、親中政党の連立が決定し、中国への傾斜が進むとの指摘も出ている。中国外務省報道官は22日の記者会見で「(両国と)政治的相互信頼を深め、戦略的協力パートナーシップを発展させる」と説明した。
 中印関係は2020年、インド北部の係争地で両軍が衝突し20人以上の死者が出たことで急速に悪化した。
 中印は先月、国境問題解決に向けた軍高官協議を実施。「国境地域の平和維持で合意した」(中国国防省)が、今月にはインドによる係争地のトンネル開通を巡って非難の応酬となった。習政権は、インドが武器調達などで米国への接近を強めていることにも神経をとがらせており、関係修復の道筋は見えていない。 

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