「豚の福祉」に波紋=肉販売規制に生産者悲鳴―米 2024年03月23日 15時41分

養豚場で飼育されている豚=2020年5月、米中西部イリノイ州(AFP時事)
養豚場で飼育されている豚=2020年5月、米中西部イリノイ州(AFP時事)

 【ニューヨーク時事】ストレスの少ない環境で家畜を育てる「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を巡り、米西部カリフォルニア州の法規制が畜産業界に波紋を広げている。飼育方法の基準を満たさない豚肉製品の販売を州内で禁じることが柱で、対応には畜舎の改造費などがかさむため、生産者は悲鳴を上げている。
 同州が提案した規制法は、2018年の住民投票で承認された。反発した生産者団体が訴訟を起こしたが、連邦最高裁が23年に規制法を支持する判断を下したことを受け、今年1月に完全施行された。
 規制では生産者に対し、妊娠中の母豚が自由に動き回れるよう1頭当たり少なくとも2.2平方メートルの面積確保を義務付けた。カリフォルニア州内での豚肉やベーコンの販売には、第三者機関から認証を得て基準を順守している証明が必要となる。全米で人口が最も多い同州は消費する豚肉の9割を州外に依存しているため、サプライチェーン(供給網)全体に大きな影響が及ぶ。
 全米豚肉生産者協議会(NPPC)の推計によると、基準を順守した場合、1頭当たりの投資コストは2割増の最大4000ドル(約60万円)となる。NPPCは「小規模生産者は廃業に追い込まれる」と非難。豚肉製品によっては価格が4割上昇するとの当局試算もある。
 ビルサック農務長官は先月の下院公聴会で、他州もカリフォルニア州の規制に追随する可能性があることを念頭に、「生産者に深刻な懸念を与える」と危機感を表明。連邦議会が規制の拡大防止を図る立法措置を講じる必要があるとの考えを示した。 

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