「イスラム排斥」懸念の法施行=総選挙前、与党支持拡大狙いか―インド 2024年03月19日 14時24分

インドの改正国籍法施行に反対する学生団体やNGOのメンバー=13日、南部ベンガルール(EPA時事)
インドの改正国籍法施行に反対する学生団体やNGOのメンバー=13日、南部ベンガルール(EPA時事)

 【ニューデリー時事】インド政府が、少数派のイスラム教徒排斥につながると批判されていた改正国籍法の施行を発表し、波紋を広げている。総選挙が間近に迫った時期だけに、ヒンズー至上主義団体を後ろ盾とするモディ政権による支持拡大を狙った一手とみられている。
 「世俗国家なのに、宗教に基づく差別が生じている。100%(与党による)選挙アピールのためだ」。首都ニューデリーのイスラム系大学院に通う男子学生(23)は憤った。総選挙は4月19日から6月1日にかけ、7段階に分けて投票が行われる。
 政府は今月11日、改正国籍法の運用規則を唐突に発表。同法はパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンのイスラム圏3カ国で宗教的迫害を受け逃れてきた不法移民に、一定の条件下で市民権(国籍)を与える内容だ。対象はヒンズー教徒やシーク教徒らで、イスラム教徒は含まれない。
 2019年末に成立したものの、直後から「差別的だ」として、イスラム教徒だけでなく多数派のヒンズー教徒も抗議デモを展開。警官隊との衝突で死者や逮捕者が相次ぎ、4年以上も施行が見送られてきた。
 同法施行によって、将来的にイスラム系国民の国籍剥奪につながるのではないかとの懸念が再燃。野党・全インド統一ムスリム評議会のオワイシ党首は、X(旧ツイッター)に「宗教が国籍の根拠として認められたら、次は宗教を理由に否定することになる」と投稿した。
 アフガンのイスラム主義組織タリバン暫定政権からも、懸念の声が上がっている。報道担当幹部のシャヒーン氏はインドのニュースサイト「ワイヤ」に対し、アフガンでは「少数派への迫害はない」と主張。その上で、同法について「(イスラム教徒を含む)全ての人のためのものであるべきだ」と注文を付けた。
 こうした声に、インド政府は釈明に追われている。シャー内相は14日、地元メディアのインタビューで「国籍を付与するための法律であって、奪う法律ではない」などと語った。 

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