年内の追加利上げが適切=FOMC議事録 2023年07月06日 09時46分

[ゴールデンチャート社] 2023年7月6日

 米連邦準備理事会(FRB)は6月13日、14日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公開しました。今回の会合ではフェデラルファンド金利(FF金利)の目標レンジの据え置きが決定されました。据え置きの理由として「最大雇用」と物価の安定という当委員会の目標に向けた経済の進捗状況を評価する時間をより多く確保するためとしました。今後の金融政策の見通しとして、全参加メンバーが「金融引締めスタンスを維持することが当委員会の目標を達成するために適切である。2023年中のFF金利追加引き上げが適切」で一致、「累積的な引き締めの効果を観察し、金融政策への影響を評価するための時間を提供するため、政策引き締めのペースをさらに緩やかにすることが適切」であると述べています。

FOMC議事録(要旨) 

■米国経済の現状と見通しに関する議論

  • 米国の経済活動が緩やかなペースで拡大を続けているが、ここ数カ月の雇用は堅調に増加、失業率は低水準を維持している。インフレ率は引き続き高水準であった。参加メンバーは、米国の銀行システムは健全で強靭であることに同意、家計や企業の信用状況の悪化が経済活動、雇用、インフレの重荷になる可能性が高いとコメントした。こうした影響の程度は依然不透明であるとの見方で一致した。こうした背景から、参加メンバーはインフレ・リスクに引き続き高い関心を寄せている。
  • 実質GDP成長率がここ数四半期、底堅く推移している。参加メンバーは総じて、今年いっぱいは成長が抑制されると判断している。過去1年間の累積的な金融引き締めが、特に住宅や企業投資など金利感応度の高いセクターの需要低下に大きく寄与したと評価した。また、金融政策が経済に影響を与えるラグについての不確実性を認め、金融引き締めの経済への影響がどの程度実現されたかを議論した。インフレ率はこの1年で緩やかになったが、コア・インフレ率は年初来、持続的な緩和を示さなかった。インフレ率が当委員会の長期的な目標である2%を大幅に上回っていることから、参加メンバーは、総供給と総需要のバランスを改善し、インフレ圧力を十分に低下させてインフレ率を長期的に2%に戻すには、実質GDPの成長率がトレンドを下回り、労働市場の状況がいくらか軟化する期間が必要になると想定している。
  • 銀行セクターのストレスは後退し、銀行セクターの状況は3月上旬から大幅に改善したとの指摘があった。参加メンバーは総じて、今年初めの銀行セクターのストレスによって拍車がかかった信用状況の引き締めが、経済活動にさらに重くのしかかる可能性が高いとしてきたが、その程度は依然として不透明であった。数人の参加メンバーは、昨年初めから実施された金融引締め措置を受けて、信用状況が予想以上に大きく引き締まったようには見えないと述べた。一部の参加メンバーは、銀行の信用状況の引き締めが経済活動に及ぼす最終的な影響を確信を持って評価するにはまだ時期尚早と述べた、銀行セクターの動向が信用状況や経済活動に及ぼす潜在的な影響を注意深く監視することが重要だと指摘した。
  • 家計部門では、今年ここまでの個人消費が予想以上に好調であったとの指摘があった。何人かの参加メンバーは、株式と住宅価格が最近の高値からあまり下落していないことから、家計の総資産は高水準を維持していると指摘した。数人の参加メンバーは、家計全般では、パンデミック時に蓄積した余剰貯蓄の多くをまだ保持しているものの、高インフレと、特に低所得世帯にとっては貯蓄が枯渇していることから、消費者の予算はますます厳しい状況にに直面している兆候があると述べた。
  • 企業部門では、経済状況の軟化が指摘される一方で、予想以上の力強さを示すものもあり、接触者からの報告はまちまちだった。多くの参加メンバーは、銀行セクターの動向はこれまでのところ企業の信用利用にわずかな影響しか与えていないようだと述べた。一部の参加メンバーは、高金利の住宅セクターへの影響は底を打ちつつあるようだとし、住宅販売、建設業者のセンチメント、新築が年初から少し改善したと述べた。
  • 雇用者数が堅調に増加し、失業率が依然として歴史的な低水準にあることから、労働市場の状況は依然として非常にタイトであるとの指摘があった。ここ数カ月でプライムエイジの労働力参加率が上昇し、求人・退職率がさらに低下し、週平均労働時間が減少するなど、労働市場の需給がより良いバランスになりつつある兆候が見られる。
  • 参加メンバーは、インフレ率が容認できないほど高水準であることに同意し、5月の消費者物価指数を含むデータは、インフレ率の低下が予想よりも緩やかであると指摘した。コア・インフレ率は昨年半ばから緩やかになったものの、ここ数カ月はサプライチェーンの制約が緩和しているデータや企業関係者からの報告があったにもかかわらず、予想よりも緩やかな鈍化にとどまったと指摘があった。一部の参加メンバーは、住宅サービス・インフレの最近の緩やかさを指摘し、この傾向が続くと予想、住宅サービス・インフレ見通しの上方リスクの指摘もあった。参加メンバーは、金融政策が適切に強化されれば、長期的なインフレ期待が良好に定着され、長期的にはインフレ率が当委員会の目標である2%に戻るだろうと強調した。
  • すでに実施された金融引き締めと最近の銀行セクターの動向から派生した信用状況の潜在的な引き締めの双方による経済への累積効果について、高い不確実性が指摘された。参加メンバーは、金融引き締めの効果はまだ観察されていない可能性が高いと指摘したが、何人かは、過去の金融引き締めの効果の多くがすでに実現されている可能性を強調した。経済活動の下振れリスクについては、金融引き締めの累積的かつ急速な実施が、最終的に経済活動に予想以上の影響を与える可能性や、銀行の信用状況の引き締めによる追加的な影響が予想以上に大きくなる可能性を指摘した。

金融政策決定の関する議論

  • 参加メンバーは、インフレ率は2022年半ば以降緩やかになったものの、当委員会の長期目標である2%を大幅に上回る水準にとどまっているとの見解で一致した。経済活動は緩やかなペースで拡大を続けている。労働市場は、ここ数カ月の堅調な雇用増加と失業率の低さにより、依然として非常にタイトな状態にあったが、労働市場における需給がより良いバランスになりつつある兆候がいくつか見られる。景気は、金利上昇を含む家計と企業の信用条件の引き締めによる逆風に直面しており、経済活動、雇用、インフレの重荷となる可能性が高いが、その影響の程度は依然不透明である。このような背景の下、金融政策スタンスの大幅な引き締めの累積と、政策が経済活動やインフレに影響を与えるラグを考慮し、ほぼ全ての参加者は、今回の会合でフェデラルファンド金利の目標レンジを5〜5.25に維持することが適切または容認できると判断した。
  • 参加メンバーの大半は、今回の会合で目標レンジを据え置くことで、「最大雇用」と物価の安定という当委員会の目標に向けた経済の進捗状況を評価する時間をより多く確保できるとしている。一部の参加メンバーは、今回の会合でフェデラルファンド金利の目標レンジを25bp引き上げることに賛成または支持すると述べ、労働市場が依然として非常にタイトであること、経済活動のモメンタムが当初の予想よりも強かったこと、インフレ率が長期的に当委員会の目標である2%に戻る道筋を示す明確な兆候がほとんどなかったことを指摘した。すべての参加メンバーは、以前に発表された「連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシート縮小計画」に記載されているように、FRBの有価証券保有高を削減するプロセスを継続することが適切であることに同意した。
  • 金融政策見通しについて全ての参加メンバーは、インフレ率が依然として当委員会の目標である2%を大きく上回り、労働市場が非常にタイトな状態が続いているため、金融政策として引締めスタンスを維持することが当委員会の目標を達成するために適切であるとの見通しを示した。経済予測では、2023年中の目標フェデラルファンド金利の追加引き上げが適切と判断している。ほとんどの参加メンバーは、経済成長とインフレの見通しに関する不確実性は依然として高く、追加的なデータが金融政策の適切なスタンスを判断する上で重要であるとの見解を示した。
  • 多くの参加メンバーは、昨年の急速な金融引締め後、当委員会は引き締めのペースを鈍化させており、累積的な引き締めの効果を観察し、金融政策への影響を評価するための時間を提供するため、政策引き締めのペースをさらに緩やかにすることが適切であると指摘した。毎回の金融政策決定会合では、引き続き、入ってくる情報の全体と、それが経済見通しやリスクバランスに与える影響に基づいて行うことで合意した。また、データに依存したアプローチを国民に伝えることの重要性を強調した。

(H・N)

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■関連情報(外部サイト)

FOMC議事録(原文、FRB)