年内に追加利上げの公算大=パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ 2023年06月15日 10時03分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は6月14日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、「FOMC参加メンバーのほぼ全員が、インフレ抑制のために今年内に追加利上げが適切であると考えている」、「直近のインフレ率は鈍化しているものの、コアPCE(個人消費物価指数)は依然として高く、2%に戻すには長い道のりである」と述べました。FOMC参加メンバーが提示した経済・政策金利の見通しでは、今年末のフェデラルファンド金利(FF金利)の中央値は、5.6%と3月の見通しに比べ0.5%の上方修正となっています。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2023年6月15日

 物価の安定はFRBの責任であります。物価の安定がなければ、経済は誰のためにも機能しません。特に、物価の安定がなければ、すべての人に利益をもたらす強い労働市場を持続的に実現することはできません。

 昨年初めから、FOMCは大幅な金融引締めスタンスをとってきました。政策金利を5%引き上げ、保有する有価証券の削減を急ピッチで続けてきました。金融引き締めの進捗状況、金融政策が経済に与える不確実なラグ、信用引き締めによる潜在的な逆風を考慮し、本日、私たちは政策金利を据え置き、保有する有価証券の削減を継続することを決定しました。今後については、ほぼ全ての委員会参加メンバーが、長期的にインフレ率を2%に低下させるためには、今年中に何らかの追加利上げが適切であろうと考えています。

 米国経済は昨年大幅に減速し、最近の経済指標では、経済活動は緩やかなペースで拡大を続けていることが示されています。個人消費の伸びは今年に入って回復していますが、住宅部門は、主に住宅ローン金利の上昇を反映して依然として弱いままです。また、金利の上昇と生産高の伸びの鈍化が、企業の固定投資の重荷になっているようです。委員会参加メンバーは概して、控えめな成長が続くと予想しています。実質GDP成長率は今年1.0%、来年1.1%と、長期的な正常成長率の中央値を大きく下回るとの予測となっています。

 労働市場は依然として非常にタイトです。過去3カ月間の雇用者数の増加は、月平均283、000人と堅調でした。失業率は上昇しましたが、3.7%と低い水準に留まりました。労働市場の需要と供給がより良いバランスになりつつある兆候がいくつかあります。労働力率は、ここ数カ月、特に25歳から54歳で上昇しています。名目賃金の伸びは緩和の兆しを見せており、今年に入ってから求人数は減少しています。雇用と労働者のギャップは減少しているものの、労働需要は利用可能な労働者の供給を依然として大幅に上回っています。委員会参加メンバーは、労働市場の需給状況が時間の経過とともにより良いバランスになり、インフレの上昇圧力が緩和されると予想しています。

 インフレ率は、長期的な目標である2%を大きく上回っています。4月までの12カ月間、PCE(個人消費物価指数)は4.4%上昇し、変動の激しい食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコアPCEは4.7%上昇しました。5月の消費者物価指数の12カ月間の変動率は4.0%、コアCPIの変動率は5.3%でした。インフレ率は昨年半ば以降、いくらか緩やかになっていますが、インフレ圧力は依然として高く、インフレ率を2%に戻すプロセスは長い道のりにあります。PCEインフレ率の予測の中央値は、今年3.2%、来年2.5%、2025年2.1%となっています。変動しやすい食品とエネルギー価格を除いたコアPCEインフレ率は、総インフレ率よりも高くなると予測され、今年の予測中央値は3.9%に修正されました。

 私たちは昨年初めから政策金利を5%ポイント引き上げてきました。政策引き締めの効果は、金利の影響を受けやすい経済分野、特に住宅や投資などの需要に表れてきています。しかし、金融引き締めの効果が、特にインフレ率において十分に発揮されるには時間がかかるでしょう。経済は、家計や企業の信用状況の悪化による逆風に直面しており、経済活動、雇用、インフレに重くのしかかると思われます。これらの影響の程度は依然として不透明です。

 当委員会は本日の会合で、金融引き締めの進展具合、金融政策が経済に与える不確実なラグ、信用引き締めによる潜在的な逆風を考慮し、FF金利の目標レンジを5〜5.25%に維持し、保有有価証券の大幅削減のプロセスを継続することを決定しました。先に述べたように、ほぼすべての委員会参加メンバーが、年内に金利をいくらかさらに引き上げることが適切であると予想しています。今回の会合では、これまでの経過とスピードを考慮し、FF金利の適正値は、経済が予測通りに進展した場合、参加メンバーの中央値は、今年末が5.6%、2024年末が4.6%、2025年末が3.4%になると予測しています。今年末については、3月の予測より中央値が0.5%高くなっています。経済が予測通りに進展しない場合、金融政策の道筋は最大限の雇用と物価安定の目標を促進するために適切に調整されます。私たちは引き続き、入ってくるデータの全体像と、それらによる経済活動やインフレの見通し、リスクのバランスに与える影響に基づいて、会合ごとに意思決定を行っていくつもりです。

 私たちは、インフレ率を2%の目標まで低下させ、長期的なインフレ期待を適切に維持することに引き続き取り組んでいます。インフレ率の低下には、トレンドを下回る成長率と労働市場の軟化が必要です。最後に、私たちは、私たちの行動が全国の地域社会、家族、企業に影響を与えることを理解しています。

[ゴールデンチャート社]

■関連記事

6月14日、FRB声明=利上げを据え置く

■関連情報(外部サイト)

FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)